相傘 ページ27
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「煉獄って髪長いけど全然うねらないよね〜この時期なのに」
「うむ!神崎は少しうねっているな!!」
「梅雨だからね〜」
"サラサラだ〜ツンツンだ〜"なんて言いながら煉獄の髪の毛を触る彼女。
「それにしても神崎は何故ジャージ姿なのだろうか!しかもその体操着は不死川のではないか!!」
「かくかくしかじかだよ」
「それで理解出来んの居ねェから」
説明めんどうだからって省略すな。
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「熱血の煉獄でも雨を止ませる事は出来ないんだね」
「お前煉獄の事なんだと思ったんだ」
「宇髄と同じ系列かなって」
自称祭りの神と同じ部類にするなや。てか系列ってなんだよ。
煉獄を隣のクラスに帰して俺とAはダラダラと教室で窓の外に映る土砂降りの雨を見つめた。
「湿気が凄いから髪くくって〜」
「へいへい」
ヘアゴムと櫛を貰い俺は彼女の長い髪の毛をひとつに纏めてポニーテールにしたのだった。
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「…ビニ傘ってさ、どれも同じデザインだからぶっちゃけ見分けがつかないじゃん」
「……そうだなァ」
下校時刻、まだ雨は止む気配はなく湿った空気の中俺と彼女は靴箱に居た。靴を履き替え深緑色の傘を持ち、俺はAを待つ。が、Aは傘立ての前で立ちすくんだまま動かない。少々嫌な予感がしながらも俺は彼女に話しかけた。
「ビニ傘、誰かに取られたんだなァ」
「……こんな事になるなら朝使ってやれば良かった」
俺の傘の中にトボトボと入る彼女の肩をポンッと叩き"どんまい"とだけ言っといた。
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「体操服洗って返すね」
「あァ、あんがとなァ」
「こちらこそ」
ひとつの傘に2人分の影。いわゆる相合傘。肩と肩が触れ合う程の距離の近さに緊張する俺といつも通りな彼女。ま、分かってたけどよ。
「梅雨が明けたら夏眠の季節が来るね」
「冬眠みたいに言うんじゃねェ」
「夏は苦手なんだよなぁ、動けないから」
「年中動かねェ女が何言ってんだよ」
思い出すのは高2の夏。今にも溶けて死にそうなAを必死に介護した記憶が蘇る。机の上に毎時間氷枕敷いて寝てた女は多分伝説に残るだろう。多分今年もああなるんだろうなァ。
「じゃ、また明日なァ」
「うん、ばいばいさねみん」
彼女のマンションに到着して俺は屋根がある場所までAを送り、手を振って別れた。
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「…意外と距離、近かったなぁ」
雨音が激しく鳴り響く中、そんな彼女の声が聞こえたのは知る由もない。
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うぇすとり?ぁー(プロフ) - 前編読み終わりました!いくまさんのギャグセンス最高でした!へいたくしーが前編の最後のシーンでは言えなくなってしまう甘酸っぱい展開最高でしたっ! (2021年10月13日 22時) (レス) @page50 id: 9275faa17d (このIDを非表示/違反報告)
最高 - これはッ!!!絶対にもッッッッと伸びるべきです(迫真)本当に面白いです可愛いです最高です (2021年3月18日 16時) (レス) id: f0ef8aefa1 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - ルナさん» コメントありがとうございます。最初、田中くんの漫画を読んでこんなヒロインを書きたいなと思い執筆させて頂きました。お気付きになられたとは笑これからの展開はオリジナルが多いのでお時間あれば続編も是非ご覧になって下さいね! (2021年2月27日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - yuenさん» コメントありがとうございます。作品を好きと言って下さり嬉しい限りです……!続編もよろしくお願いいたします! (2021年2月27日 23時) (レス) id: de9f3ec973 (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - 田中くんはいつもけだるげだ!! (2021年2月27日 14時) (レス) id: 72ff3a10a5 (このIDを非表示/違反報告)
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