正直 ページ44
.
「なァ、A。こんな俺達でも幸せを掴んでいいと思うか」
藍色の瞳を捉える。私の身体はその台詞を聞くと同時に硬直してしまう。それは何故か。答えられないからだ。答えられないの言うより、答えたくない。
その気持ちを察したのか、彼は私の頬に優しく振れた。ふわりと漂う彼の香り。ああ、抱き締めて欲しい。このまま自分達の境遇なんて全て忘れて、意のままに思うがままに私を包み込んで欲しい。欲しい。貴方が、欲しい。
「…ッ、掴めるわけない」
「嘘つけ」
「え……」
土方さんは「下見ろ」と指を差す。その方向に顔を向けると───私の手は、土方さんの隊服を掴んでいた。
「身体は正直だろ。それがテメェの『答え』だ」
「…それでも!私なんかが……ッ、」
「
言葉が重なり合う。本当の気持ちに気付いて欲しいのに、悟られたくない。矛盾な思いが連なっていく。止めて欲しい。気づいてほしい。答えて欲しい。
「なァ、A」
ねえ、土方さん。
「自分を卑下して護るのは終いにしようや。そんな生き方してもつまんねェだろ。俺はテメェがそんな風に生き続けるのが見てられねェ」
私も、そんな生き方したくない。本当はしたくないんだ。
「自分を責めンな。前を向け。いいか、生きろ。幸せになれ。それが今テメェが出来る精一杯の『償い』だ」
一粒の涙が零れた。それを始まりとして一気に今まで溜め込んでいたモノが溢れ出す。どうして、どうして。どうして貴方はそんなに優しいんだ。どうしてこんなにも「暖かい」んだ、と。
「全部受け止める必要なんてねェよ。一人で担ぐんじゃねェ。俺も一緒に……背負うつもりだ」
「…ッ、ひ、じ……」
誰かが言った。その通りだと思った。人の生命というものは尊く、儚い。唯一無二のちっぽけな存在である。
それを簡単に手放す事なんて出来ない。出来やしない。臆病だなんだと言われながらも、人間誰しも率先して死にたいなんて思いたくないのだ。
強く強く、自分達の「生命」がある事を確かめ合いながら抱き締め合う。息をし続け合う。私は───生きたい。
「土方さん、好きです。貴方が好きです、大好きです」
「あァ、知ってらァ」
「私と一緒に生きて下さい。残された生涯を貰って下さい。貴方の隣で居させて下さい」
「─────そして、」
.
223人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いくま(プロフ) - ふぉい!さん» 選ばれたのは綾〇ですよ((ニコッ (2018年7月24日 8時) (レス) id: 8c955fc7fb (このIDを非表示/違反報告)
ふぉい! - 選ばれたのは綾鷹wwww (2018年7月2日 19時) (レス) id: 1633712eeb (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - マピトさん» コメントありがとうございます。一番だなんてとんでもないです。。。私もずっと土方さん推しなのでマピトさんの小説読んできます! (2018年4月5日 14時) (レス) id: 8c955fc7fb (このIDを非表示/違反報告)
マピト - 今まで見てきた小説の中でこの小説が一番良いなと思いました。 私も土方オチの小説を書いているので見習いたいと思います! (2018年4月5日 11時) (レス) id: 9353c4256d (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - ユラさん» コメントありがとうございます。瞬時に思って頂き光栄です、笑しかし文才が皆無なのでこらから無茶苦茶展開になると思いますが、これからもよろしくお願い致します。 (2018年4月4日 12時) (レス) id: 8c955fc7fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ