予感 ページ33
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それは、一言で言うならばいつも通りの日々だった。日々
「…いつも通り、か」
煙草を吹かしそう呟く声は自分でも驚く程弱々しかった。
原因は分かっている。何故自分がこれ程までに弱り、仕事もロクに集中せず、煙草ばかり手を伸ばしているのか。俺の中で知らないうちにあの女の存在がこれほどまでに大きくなっていたらしい。つくづく情けない話だ。
一旦休憩を取り頭をリセットしようと思った俺は筆を置き、煙草に手を付けようとした。
その時だった。急に部屋の外から大きな足音が響き、段々とその効果音は近付いてきたのだ。そして、急ブレーキの如く俺の部屋の前でその音は止まり、勢い付けてノックもせず襖を開いた。
「副長ォオ!副長に客人が見えてます!」
「うるせェエ!!ちったァ静かにしろ!!廊下は走るなってガキの頃教わんなかったのか!!」
ノックもせずに襖を開けた人物とは、真選組観察こと山崎退。野郎は息を切らして客間の方へ指をさしていた。
「俺に客だァ?一体どこのどいつだ」
「なんか、おばあちゃんです」
「…はァ?」
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客間に行くと、そこに居たのは例の甘味屋の店主、柊さんだった。山崎が淹れたであろう熱い緑茶を優雅にすすりながら柊さんはこんにちは、と挨拶をしてきた。
「俺に何か用か?」
純粋に疑問だった。柊さんとは直接関わりはない。なのにこの人は俺に用があると言ってわざわざ屯所までおいでなすったのだ。何か深い理由があるのだろう。すると柊さんは緑茶を置き、眉を下げながら口を開いた。
「Aちゃんが最近お店に来なくてね。携帯も繋がらないし無断欠勤なんてする子じゃないのよ。貴方、Aちゃんの恋人をだろう?何か知ってるかい?」
「…Aが?」
その時、妙な胸騒ぎがした。何故か分からないが全身に鳥肌が立ち、身震いまでしてしまった。
───
彼女はそう言った。この先俺が何度言葉をかけようと、何度関わりを持とうと、彼女はそれを拒み一人の道を選ぶのだろう、と。その時俺は悟っていた。
───私の平穏を邪魔しないでくれ
彼女はそう言った。これが最後の境界線だった。俺は今、彼女の為に何が出来るというのだ。
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いくま(プロフ) - ふぉい!さん» 選ばれたのは綾〇ですよ((ニコッ (2018年7月24日 8時) (レス) id: 8c955fc7fb (このIDを非表示/違反報告)
ふぉい! - 選ばれたのは綾鷹wwww (2018年7月2日 19時) (レス) id: 1633712eeb (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - マピトさん» コメントありがとうございます。一番だなんてとんでもないです。。。私もずっと土方さん推しなのでマピトさんの小説読んできます! (2018年4月5日 14時) (レス) id: 8c955fc7fb (このIDを非表示/違反報告)
マピト - 今まで見てきた小説の中でこの小説が一番良いなと思いました。 私も土方オチの小説を書いているので見習いたいと思います! (2018年4月5日 11時) (レス) id: 9353c4256d (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - ユラさん» コメントありがとうございます。瞬時に思って頂き光栄です、笑しかし文才が皆無なのでこらから無茶苦茶展開になると思いますが、これからもよろしくお願い致します。 (2018年4月4日 12時) (レス) id: 8c955fc7fb (このIDを非表示/違反報告)
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