約束 ページ21
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送ると言われたのでお言葉に甘えてしまった。見合いは無事に終わった、お前には散々迷惑かけたが感謝するとの事。先程されたキスの話題は全く触れなかった。自分も、相手も。
最初はダンマリと帰っていたが途中からぽつりぽつりとにわか雨の様に途切れた言葉が降ってきて何となく会話につながった。どうやら私はイケメン相手だと喋るらしい。何となくどこかの会話にツボがはまってしまった様でいつの間にか自分の口元は緩んでいた。
「テメェも笑うんだな」
「そりゃ人間ですから」
意外そうに目を少しだけ見開き私にそう告げた彼に、噴き出しながら私は笑った。笑うという行為ももしかしたら久しぶりなのかもしれない。少し自身の口元に違和感が残っていたからだ。彼と私の嘘の関係は今日限り。中身はかなり濃かったが今思うとあっという間だった。
「約束覚えてますよね」
「あァ」
「それはよかった。約束通り私を捕まえるのはやめて下さいね」
「分ァってるよ」
それだけの会話を残してまた私達の間には沈黙の空間が出来てしまった。今こうしてよくよく考えてみるとこの人は警察で私は元攘夷志士。どう足掻いても関わってはいけない関係なのだ。
それがまあどうしたもんか、どこをどう間違えたら警察トップの野郎に偽物の恋人役を頼まれてしまうものだろうか。やはり人生何が起こるか分からないものだ。怖い怖い。
「あ、此処です。家」
1人で考え込んでいると気づけばもう自宅の前まで到着していて。土方さんに自宅の場所を伝えると彼はその場に立ち止まり私の家であるマンションをじっと見つめていた。
「一人暮らしか?」
「当たり前です」
サラッと答えると彼は「そうか」とだけ答えてまた黙り込んでしまった。質問の意図が掴めず私はどうかしたのかと彼に問うと彼は首を横に振って何でもないとだけ答えていた。
「言ってくれなきゃ…言葉にしなくては伝わりませんよ」
昔、どこの誰かが言ったその台詞がそのまま無意識に口から溢れた。攘夷志士時代、血だらけになりながらその言葉を吐いた野郎。こんな丁寧口調ではなかったが私の心にはちゃんと伝わった。
別に仲が良いとかそんな関係ではなかったが。紫がかったあのサラサラの髪の毛が脳裏にチラついた。今頃生きているのだろうか。まあ私には関係のない話だ。
「お前ェはこれからどうするんだ」
彼ははっきりとそう言った。彼のまっすぐな視線が私の心臓にグサグサとめり込む感触がして不快だった。
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いくま(プロフ) - ふぉい!さん» 選ばれたのは綾〇ですよ((ニコッ (2018年7月24日 8時) (レス) id: 8c955fc7fb (このIDを非表示/違反報告)
ふぉい! - 選ばれたのは綾鷹wwww (2018年7月2日 19時) (レス) id: 1633712eeb (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - マピトさん» コメントありがとうございます。一番だなんてとんでもないです。。。私もずっと土方さん推しなのでマピトさんの小説読んできます! (2018年4月5日 14時) (レス) id: 8c955fc7fb (このIDを非表示/違反報告)
マピト - 今まで見てきた小説の中でこの小説が一番良いなと思いました。 私も土方オチの小説を書いているので見習いたいと思います! (2018年4月5日 11時) (レス) id: 9353c4256d (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - ユラさん» コメントありがとうございます。瞬時に思って頂き光栄です、笑しかし文才が皆無なのでこらから無茶苦茶展開になると思いますが、これからもよろしくお願い致します。 (2018年4月4日 12時) (レス) id: 8c955fc7fb (このIDを非表示/違反報告)
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