当日 ページ12
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そんなこんなで時はあっという間に進んでいきいよいよお見合い当日。いつもより少し派手な化粧を施して昨日買ったばかりの着物に袖を通した。髪もささっと結い上げて毛先を緩く巻く。簪なんて普段付けないのにたまには良いかなと着飾ってみる。鏡に映る自分を見て我ながら誰って思うくらい化けた気がする。
全ての支度を済ませスマホを起動し昨日の夜土方さんから来たメールを開いた。内容は集合時間のみ、絵文字ひとつない素っ気ない文面が彼らしい。スマホを閉じて自宅を出る。
季節は春。桜が咲き始めた頃だがまだ肌寒い。屯所に着くと今日は門番がいた。門番の人になんて説明をしようか考えたが、門番の人は私の姿を見るなり腹から声を出しているんじゃないかレベルの馬鹿でかい声で私に話しかけてきた。
「Aさんですよね!話は副長から伺っています!なんとも美しいお方で!只今開けます!」
「…ありがとうございます」
控えめに挨拶をしてとりあえず土方さんの部屋に向かった。いきなり開けると後が怖いから一応ノックする。すると襖の向こうから「開けていいぞ」との声を聞きそっと開ける。土方さんはいつもの隊服ではなくちゃんとした正装姿で仕事をしていた。黒の着物がよく似合っている。普段からかっこいいと思ってはいたがこの姿だと尚かっこよさが増す。このイケメンめ。ボーッと見つめていたのがバレてしまったのか「あんまジロジロ見んな」と、土方さんは目を伏せて言った。
「あ、すみません。今日はいつもと雰囲気が違ってたから」
「そりゃァ見合いだからな。それなりの身なりは必要だろ」
「ご最もで」
「Aもいつもと違ェな」
そう言って土方さんは私の顔をまじまじと見つめた。イケメンと何秒も見つめ合う行為に居た堪れなくなり目を逸らしてしまう。そして無理矢理声を張らせて「そ、そういえば!」と話を逸らせた。
「何時に出るんですか?」
「11時くらいに向こうに着きゃいい」
一瞬にして会話は終了し、ひとつ返事をして私はちょこんと隅の方で正座をする。腕時計で時間を確認するとまだこの部屋にいた方が良さそうだ。暇だなと思いつつ土方さんの部屋を見渡す。当の本人は既に視線を私から机の上にバラまかれた大量の書類達に移していて無言で筆を走らせていた。仕事をする彼の横顔を見るだけの一時だったが苦ではなかった。彼の高すぎる鼻と切長の瞳を見るのがむしろ心地よかった。いや変態ではない、決して。イケメン鑑賞くらいさせろ。
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いくま(プロフ) - ふぉい!さん» 選ばれたのは綾〇ですよ((ニコッ (2018年7月24日 8時) (レス) id: 8c955fc7fb (このIDを非表示/違反報告)
ふぉい! - 選ばれたのは綾鷹wwww (2018年7月2日 19時) (レス) id: 1633712eeb (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - マピトさん» コメントありがとうございます。一番だなんてとんでもないです。。。私もずっと土方さん推しなのでマピトさんの小説読んできます! (2018年4月5日 14時) (レス) id: 8c955fc7fb (このIDを非表示/違反報告)
マピト - 今まで見てきた小説の中でこの小説が一番良いなと思いました。 私も土方オチの小説を書いているので見習いたいと思います! (2018年4月5日 11時) (レス) id: 9353c4256d (このIDを非表示/違反報告)
いくま(プロフ) - ユラさん» コメントありがとうございます。瞬時に思って頂き光栄です、笑しかし文才が皆無なのでこらから無茶苦茶展開になると思いますが、これからもよろしくお願い致します。 (2018年4月4日 12時) (レス) id: 8c955fc7fb (このIDを非表示/違反報告)
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