親 し き 仲 に も 礼 義 あ り 6

267 やっぱり嫌だった ページ17

『……ウチらも家に戻ろっか！皆待ってるだろうからさ！』




勇人のいる方を笑顔で振り向きながらそう声をかける。




勇人「…俺達といる時みたいな笑顔じゃなかった」




『…え？』




下を向いてたからなんて言ったか分かんなかったけど、空気が少し震えた。




勇人「…正直やっぱまだ嫌だよ」




顔を上げた勇人。



その口の動きに集中して、嫌だという単語に自分の肩が軽く動いた。




『…何が嫌なの？』





勇人「俺達じゃあんな風に笑顔にさせてやれねーのかなって不安になる」




『そんな事ないってば！ただ久しぶりに会って、話せて嬉しくなっただけ』




勇人「……あいつが来てもそんな事言えんのかよ」




『……は？』




勇人の口から出る《あいつ》って単語。






もうそろそろ誰のことか分かる。






…赤葦京治…



でしょ？




『……赤葦京治って人の事言ってんの？』




そう聞いたら、

勇人のまとう雰囲気が変わった。





勇人「…なんで…その名前…」





『ミカに言われてやっと分かった。
ウチと付き合ってた人だ…って』





勇人「…また…赤葦と付き合うの？」





『今は誰とも付き合う気なんて無い。
…もし付き合うとしても、ここの皆にもちゃんと言うよ』




いつもこんな話をするとキリがなくなる。





勇人「…Aがそれで幸せになれんなら俺は赤葦でもいいと思うよ。

…俺だってそろそろA離れしなきゃいけねーなって思ってたし」




A離れ…？




別にそんなの気にしてないのに…




『離れなくていいじゃん。なんでそうなんの？』





勇人「…いいの？…このままでも…？」




『え、逆に何がダメなの？笑』





勇人「いや…ダメじゃないけど…
俺がダメだから…

もしあいつがここに来たらさ、最初におれが話してもいい？」



赤葦って人と…勇人はやっぱり知り合いなんだ。





『別にいいよ』




でも…


そしたら病院に来た事あるって事だよね？



じゃなきゃ知り合いなんてならないでしょ？
ウチと勇人が初めて会ったのだって病院だし…





その後は2人とも家に戻って、いつも通りの日常を送った。






それから1週間。







うつ病患者のカウンセリングをしたり…






たくさんの相談者が来てくれるようになった。







でも心の片隅では…









どんどん膨れ上がる思いがある。









赤葦京治…









彼に会いたいというその気持ちが。

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