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「い、いらない、です」
どうしようもなかった。頭がいっぱいいっぱいになって、最初に出てきた言葉がよりによって「いらない」だなんて。
当然目の前の彼は布の向こうの目を丸くして、驚いた顔で私を見ている。
「ど、どうして？」
彼の両手には紙とペンが握られていて、その生き生きとしていた表情を私が崩した。
棚の中には綺麗な香水。支給された高価な衣装やアクセサリー。どれも私には似合わない。
イライさんがくれたオルゴールだって、それだけで充分すぎるのに。
「いらないです。誕生日の...その、プレゼント、とか...」
微睡みの中で蘇る光景。その記憶を鮮明に覚えているが、身体がふわふわと浮いているように落ち着かない。そして現実味が確かにあるのに、現実味がまるでない。
これは夢か。また、あの時の夢を見ているのか。
誕生日プレゼント.......。そんなの母からも、一度は父親になりかけた母の愛人からも、もちろん貰ったことが無い。
貰ったものと言えば、愛人だった男の娘がプレゼントされる予定だった服と家。あんなものはプレゼントでもなんでもない。
「私に何か買いたいだなんて...お金の無駄になってしまいます。イライさんの好きな物を買ってください」
物欲もほとんど無いに等しい。
生活用品や食事など、残酷なゲームを繰り返す代わりに荘園の主とナイチンゲールはなんでも支給してくれる。
私が幼少期に過ごしてきた環境と比べれば、贅沢すぎるほどだ。
それに高価な衣装はゲームに着ていくには気が引けるし、かと言って外で着るような用事もない。
だから正直、無い方が気が楽なのだ。
しかしイライさんは困ったように眉を下げて笑うばかりだ。
「無駄だなんて、そんな事言わないでよ。ほら化粧品なんてどう？ この前女性陣が話しているのを聞いてね、最近はデザインも豊富だとか....」
「高価なものを貰っても、なんだか気が引けてしまって...。それに私には持て余してしまいますので、安物で十分です。あの、本当に何も要らないんです、いいですから」
些細なものでもいいから、「欲しい」と一言強請っていたのならどんなに可愛げがあった事だろうか。
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イキテル(プロフ) - 夜さん» こんなに前の作品にコメントありがとうございます！ 今はスランプ気味で中々お話が思うように書けていませんが、コメントを励みに頑張ります。また機会があればとこかでお会いしましょう！ (2022年1月31日 0時) (
レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 初めまして。この作品を久しぶりに読み返させて頂き、改めて素晴らしいなぁ、と感じました。更新されるのを今か今かと楽しみにしていた日々が懐かしいです。当時はコメントをする勇気がなく、1、2年越しにはなってしまいますが、完結おめでとうございます！ (2022年1月30日 3時) (レス) @page45 id: 1656e46327 (このIDを非表示/違反報告)
雪モチ(プロフ) - イライ大好きでなかなかない小説の中でこんなに面白い小説をただで読めるのが夢のようです！本当に面白かったです！更新お疲れさまでした、完結おめでとうございます！ (2021年9月3日 8時) (レス) id: 920125ce92 (このIDを非表示/違反報告)
イキテル(プロフ) - 桃花さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました。またどこかでお会い出来れば幸いです。 (2020年12月11日 0時) (レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
桃花(プロフ) - 転生ものが大好きなので、主様の素敵な小説に出会えてよかったです(*^▽^*)完結おめでとうございます、ありがとうございました！ (2020年12月10日 21時) (レス) id: 7b3a824d31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イキテル | 作成日時：2020年8月6日 0時
