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その時足元が暗いせいでもつれたのか、倒れかけたAを咄嗟に受け止めた。刹那、視界が反転していく。
Aの柔らかい身体の質感を感じながら、小さな水音を立てて僕達は海の中へ落ちた。
「大丈夫？ 怪我は無い？」
「.......すみません。イライさんこそ、大丈夫ですか？」
「僕は大丈夫...だけど」
尻もちを付いた僕の足の間に手を付いているAの顔を覗き込むと、彼女の両目からは今まで我慢していたであろう大粒の涙が真珠のように溢れた。
「貴方は優しい。けど、イライさんは人が思ってるより良い人なんかじゃない。もっと我儘で強情な人だって、私だけが知ってる」
不意に上げたAの顔は何時になく真剣で、それでいて綺麗だった。
涙に濡れた瞳も、色付いた頬も、細い髪も全て僕のものにしてしまいたい。そう思ってしまうほどに。
「私だってイライさんとずっと一緒にいたい。明日も.......ううん、来年もその次の年も。まだ私、イライさんの終わりを見てないから」
水に濡れて、Aの服が身体に張り付いている。
控えめな身体のラインが視界に映ったとき、僕は思わず目を逸らしていた。
にもかかわらず、僕の気持ちを知ってか知らずかAは僕の背に腕を回し、息が止まるほどに強く、強く抱き締めた。
前は自分からこんなこと、絶対にしてくれなかったのに。
彼女の胸から直に心臓の音が伝わってくると、つい涙腺が熱くなってしまう。
こんなに簡単な事なのに。どうして気が付け無かったんだろう。
Aの体温に、鼓動に、身体中の細胞が一気に沸き立つような昂りを覚えた。
僕はまだAを愛している。それと同時に、僕の元から居なくなってしまうことが怖い。
「う、あ.......A....」
縋り付くように彼女を抱きしめて、子供のように声をしゃくりあげて泣いた。
「ごめん、ごめんねA」
昔のように情けなく肩を震わせて泣きじゃくる僕を、Aはただ何言わずに、温かい身体で抱きしめ続けてくれている。
「好きだよ、愛してる。もう二度と忘れないから」
この先に残酷な未来が待ち受けていたっていい。再び荘園に呼び戻されようが、僕が死のうが。例えまた、彼女が死んでしまう夢を見たとしても。
「謝らないでイライさん」
Aの冷たい指が頬に触れる。彼女は僕にとって居心地の良い陽だまりそのものだ。暖かくて優しい。涙が出るほど愛おしい。
「今度は必ず、最期まで傍にいてくださいね」
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イキテル(プロフ) - 夜さん» こんなに前の作品にコメントありがとうございます！ 今はスランプ気味で中々お話が思うように書けていませんが、コメントを励みに頑張ります。また機会があればとこかでお会いしましょう！ (2022年1月31日 0時) (
レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 初めまして。この作品を久しぶりに読み返させて頂き、改めて素晴らしいなぁ、と感じました。更新されるのを今か今かと楽しみにしていた日々が懐かしいです。当時はコメントをする勇気がなく、1、2年越しにはなってしまいますが、完結おめでとうございます！ (2022年1月30日 3時) (レス) @page45 id: 1656e46327 (このIDを非表示/違反報告)
雪モチ(プロフ) - イライ大好きでなかなかない小説の中でこんなに面白い小説をただで読めるのが夢のようです！本当に面白かったです！更新お疲れさまでした、完結おめでとうございます！ (2021年9月3日 8時) (レス) id: 920125ce92 (このIDを非表示/違反報告)
イキテル(プロフ) - 桃花さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました。またどこかでお会い出来れば幸いです。 (2020年12月11日 0時) (レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
桃花(プロフ) - 転生ものが大好きなので、主様の素敵な小説に出会えてよかったです(*^▽^*)完結おめでとうございます、ありがとうございました！ (2020年12月10日 21時) (レス) id: 7b3a824d31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イキテル | 作成日時：2020年8月6日 0時
