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いっその事、全て夢ならよかったのかもしれない。
アブラゼミが喧し鳴く、蒸し暑い夏の夕方。ふとそんなことを思った。
「....ごんなさいレディ、貴女をイライさんの所へ返すにはまた時間がかかってしまいそう」
方目を閉じたまま梟は首を傾げる。
彼がいなくなってしまった個室。あれからどれだけの時間が経っただろうか。すっかり氷が溶けてしまった飲みかけのグラスを眺めていた。
まだ、彼の香りが残っている。
この忌々しい暑さも、記憶も、指輪のことも全て、何かの悪い夢だったら。
目が覚めたら、一番幸せだった時の日常が目の前にあったのなら。
「随分話し込んでいたようですが」
いつまで経っても部屋から出ない私を見兼ねて、食器を片付けに来たイソップ・カールが呟いた。
前世で彼と何か関わりがあったかと言えばそうでは無いが、彼はイライさんにとても良く懐いていたと思う。
「彼.......イライさん、ここを去る時に僕の名前を」
現在のイライさんが占い師では無いように、サベダーさんが傭兵で無いように、彼もまた納棺師ではない。
現在の彼はこの小さな喫茶店を叔父に当たる男と二人で営んでいる。
「思い出したのでしょうか。Aさんのことも、僕達のことも」
「....... ......さあ、どうなんでしょう」
ただ一つ前世と違うところといえば、社交恐怖が無くなったことくらい。
もちろん当初の私はカールさんがこの土地で働いているなんて知るはずも無く、指輪を届けに知らない土地へやってきた日、一休みしようと入った喫茶店で本当にたまたま再開してしまったのだ。
驚くことに、滞在中私が住み込みで働けるようにと自ら叔父を丸め込んでしまったのも彼だ。
おかげで宿の心配はせずに済んだが、ずるずると引きずるようにかれこれ一ヶ月が経とうとしている。
「何の因果でしょうね。僕にもAさんにも記憶がある。.......荘園に関わった人達全員、といっても過言ではないかも」
「イライさんは覚えていませんでした。全員じゃない」
「でも思い出した。思い出してしまった」
乾いた羽の音が響いた。
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イキテル(プロフ) - 夜さん» こんなに前の作品にコメントありがとうございます！ 今はスランプ気味で中々お話が思うように書けていませんが、コメントを励みに頑張ります。また機会があればとこかでお会いしましょう！ (2022年1月31日 0時) (
レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 初めまして。この作品を久しぶりに読み返させて頂き、改めて素晴らしいなぁ、と感じました。更新されるのを今か今かと楽しみにしていた日々が懐かしいです。当時はコメントをする勇気がなく、1、2年越しにはなってしまいますが、完結おめでとうございます！ (2022年1月30日 3時) (レス) @page45 id: 1656e46327 (このIDを非表示/違反報告)
雪モチ(プロフ) - イライ大好きでなかなかない小説の中でこんなに面白い小説をただで読めるのが夢のようです！本当に面白かったです！更新お疲れさまでした、完結おめでとうございます！ (2021年9月3日 8時) (レス) id: 920125ce92 (このIDを非表示/違反報告)
イキテル(プロフ) - 桃花さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました。またどこかでお会い出来れば幸いです。 (2020年12月11日 0時) (レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
桃花(プロフ) - 転生ものが大好きなので、主様の素敵な小説に出会えてよかったです(*^▽^*)完結おめでとうございます、ありがとうございました！ (2020年12月10日 21時) (レス) id: 7b3a824d31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イキテル | 作成日時：2020年8月6日 0時
