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「じゃあ勝手にしてやりましょうよ」
ふわり、と香水の匂いが漂う。あれだけ苦手だったこの香も今ではすっかり慣れてしまった。
ダイアー先生が出してくれるハーブティーももはやお馴染みだ。
いつも「消毒の匂いがする」と顔を顰めるナイエルさんだが、この時ばかりは悪戯好きの子供のような笑みを浮かべていた。
「わかりません...」
「簡単よ」
誰にでも自慢できるくらいのわかりやすい美人が少し笑って言う。ダイアー先生はいつもくたびれたような表情をしているが、少し口角を上げて笑う姿は本当に絵になる。
「夜中にケーキを食べたり、好きな時間に散歩に行ってみたり。それから部屋で滅多に着ない服を着てみたりね。当たり前のことでいいのよ、誰のことも考えずに自分の直感だけで決めなさい」
ふと思い立つことならなんでもいい。自分が思った通りに。
考えたこともなかった。
誰の目も気にしないで、似合わないだとか柄じゃないだとか言い訳もしないで...。
もしかしたら彼は私にそれを教えてくれようとしていたのかもしれない。
言い訳ばかりしていないで、興味のあることくらい進んでやってみなさい。そう言いたかったのかも。
.......考えすぎだろうか。
「じゃあどうする？ Aは今から何がしたい？」
音を立てないように静かにハーブティーを飲み干したナイエルさんが、私の顔を覗き込んだ。
いい香りが彼女の周りに漂っている。
「私たちも付き合うわよ」
ごくり、と喉が勝手に唾を飲み込む。
頭の中のパズルのいくつかの空白にピースを当てはめて、それを裏返したり、横にしてみたり.......。
どんなことをどの角度から見ても、私の答えは変わらなかった。
「.......い、イライさんに、謝りに行きます...」
困惑を示すかのように、目の前の二人はほぼ同時に口元を塞いだ。
らしくなく、ガタンと音を立てて机にカップを置いたダイアー先生は、これでもかと言うほどに目を見開いている。
「い、今から？ 勝手にしろって言われたばかりなのに？」
「今すぐ会うという訳では...熱も冷めてないだろうし。もう少し時間が経ったら呼び出します」
「一日くらい様子を見たらどうかしら」
「いいえ、勝手にしろって言われたので。勝手に私が時間を決めます」
胸の中には拳骨のように硬い決心が、思い立ったように現れていた。
少なからずとも意地になっていたんだと思う。
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イキテル(プロフ) - 夜さん» こんなに前の作品にコメントありがとうございます！ 今はスランプ気味で中々お話が思うように書けていませんが、コメントを励みに頑張ります。また機会があればとこかでお会いしましょう！ (2022年1月31日 0時) (
レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 初めまして。この作品を久しぶりに読み返させて頂き、改めて素晴らしいなぁ、と感じました。更新されるのを今か今かと楽しみにしていた日々が懐かしいです。当時はコメントをする勇気がなく、1、2年越しにはなってしまいますが、完結おめでとうございます！ (2022年1月30日 3時) (レス) @page45 id: 1656e46327 (このIDを非表示/違反報告)
雪モチ(プロフ) - イライ大好きでなかなかない小説の中でこんなに面白い小説をただで読めるのが夢のようです！本当に面白かったです！更新お疲れさまでした、完結おめでとうございます！ (2021年9月3日 8時) (レス) id: 920125ce92 (このIDを非表示/違反報告)
イキテル(プロフ) - 桃花さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました。またどこかでお会い出来れば幸いです。 (2020年12月11日 0時) (レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
桃花(プロフ) - 転生ものが大好きなので、主様の素敵な小説に出会えてよかったです(*^▽^*)完結おめでとうございます、ありがとうございました！ (2020年12月10日 21時) (レス) id: 7b3a824d31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イキテル | 作成日時：2020年8月6日 0時
