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「A」
扉の向こうからサベダーさんの声が聞こえる。
昨日ここを訪れた彼は実家に帰りたくないと駄々をこね、カールさんたちの優しさに漬け込み空き部屋で寝泊まりしたのだ。
私も人のことは言えないが。
少しだけ、あの荘園での日々を思い出した。
「連れて行きたい場所がある。待ってるから、支度が出来たら呼んでくれ」
「わかりました、すぐ行きます」
「ああ。....急がなくていい」
この店で働いていると、雰囲気に合わせてかオシャレを楽しむ人達とよく出会うことがある。
それこそ、頭のてっぺんから爪の先まで輝いているかのような。
艶のある髪、荒れの無い手足、綺麗な爪。もちろん服も。
それはなにも女性だけという訳ではなく、男性も同様だ。
わざわざ気を使って綺麗にしているわけでは無いのかもしれない。
彼女、彼らにとってはそれが当たり前で、何度でも誰にでも繰り返しおしゃれをして出掛けていく。
それはきっと人の本能に近いといっても過言ではないだろう。
必死に貯めたバイト代、幸せの価値は六万円程で、家賃や電気水道代に引かれその殆どが消えていく。
私に関しては要は甘えだったのかもしれないが、私には到底自分の容姿を磨いたり、綺麗な服や装飾品を買う心の余裕など無かった。
死にものぐるいで働いて、自分が自由に、楽になれる場所を探すために生きていた。夢を叶えたかった。
でも、好きな服を着て好きなメイクをして、ちゃんと自分を持って生きられたらどんなに楽しいのだろう。
綺麗な指先や服に今も昔も劣等感を抱いている。
昔と変わった所と言えば、香水の匂いや甘ったるい甘味に嫌悪感を抱かなくなったこと。
前世の母親からはもうとっくに解放されていた。
唯一、自分でつけたこの腹の傷痕が忌々しい。私は既に汚れていて一生綺麗になれることは無いのだと、前世の私が呪いを掛けているようで仕方が無い。
その通り、なのかもしれはいけど。
でも誰かに「そのままでいいよ」と言って欲しい。そんな願望がある。
「理想なんてない。性別がなくても、例え人でなくても君だけを見る」
そんなイライさんの何気ない言葉に前世の私がどれだけ救われたことか。
きっと貴方はもう忘れてしまっただろうけど。
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イキテル(プロフ) - 夜さん» こんなに前の作品にコメントありがとうございます！ 今はスランプ気味で中々お話が思うように書けていませんが、コメントを励みに頑張ります。また機会があればとこかでお会いしましょう！ (2022年1月31日 0時) (
レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 初めまして。この作品を久しぶりに読み返させて頂き、改めて素晴らしいなぁ、と感じました。更新されるのを今か今かと楽しみにしていた日々が懐かしいです。当時はコメントをする勇気がなく、1、2年越しにはなってしまいますが、完結おめでとうございます！ (2022年1月30日 3時) (レス) @page45 id: 1656e46327 (このIDを非表示/違反報告)
雪モチ(プロフ) - イライ大好きでなかなかない小説の中でこんなに面白い小説をただで読めるのが夢のようです！本当に面白かったです！更新お疲れさまでした、完結おめでとうございます！ (2021年9月3日 8時) (レス) id: 920125ce92 (このIDを非表示/違反報告)
イキテル(プロフ) - 桃花さん» 最後まで読んでいただきありがとうございました。またどこかでお会い出来れば幸いです。 (2020年12月11日 0時) (レス) id: eab5f6dd9c (このIDを非表示/違反報告)
桃花(プロフ) - 転生ものが大好きなので、主様の素敵な小説に出会えてよかったです(*^▽^*)完結おめでとうございます、ありがとうございました！ (2020年12月10日 21時) (レス) id: 7b3a824d31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イキテル | 作成日時：2020年8月6日 0時
