天使 ページ25
Aside
目が覚めた。
頭は完全には覚醒していなかったが、そんな私でも確実に最後に見た森では無い事は一目瞭然であった。周りを一言で表すのならばそれは正しく、無であった。暗闇なのかすら判別がつかず、五感からの全ての情報が掻き消されてしまう。そんな場所であった。此れが夢なのかも現実なのかも分からない。
もう、私の精神はとうに限界を迎えていた。何故私だけがこんな思いをしなければいけないのだろうか。ごく普通に生活してきただけなのに。特段悪い事なんてしていないのに。運が悪かった。そんな言葉だけでは到底片付けられない。片付けてたまるものか。
『死ね、』
誰に言ったのかも分からずこんな言葉が口から飛び出した。こんな運命を私に与えた神様?はたまた、こんなに苦しい結末になる方向へと向かってしまった自分?
そんな事解らず終いで只々自分の心に押し寄せた負の感情だけが口からすらすらと息をするように出てくる。
『何で。なんで私だけが。死ね、死んじゃえ。』
誰に言っている訳でもなく、誰かを恨んでいる訳でもない。自分の本心をそのまま曝け出しているようで。そんな自分が怖かった。其れでも、止めようが無くて。
「そんなに言うなら死んだらええんに。誰にも必要とされてへんしなぁ。其れとも、誰かを憎んどるんか?じゃあ、殺せばええやん。そんくらいできるやろ?」
背後からこんな声が聞こえた。
悪魔の囁き。今の私にとっては天使からの御告げ。比喩では無い。本当に振り返った目の前には、私の理想の天使像である者が居たのだから。
背中には周りとは真反対な純白の羽。頭の上には重力を無視した金色の輪。正しく天使様。着物を見に纏い、狐の面で顔は見えなかった。其れでも怪しさなんて一切無くて、今の私には目が痛くなるくらいに輝いていた。
『天使さ、ま?』
「せや。神様からの助言をAちゃんに伝えに来たんやで。今此処で自死するか誰かを殺すか。別に助言通りにせんでもええんやけどな。」
『私が、死ね、ば。』
「さぁ、どうする?」
急げとは言われていないが、天使様を待たせるなど厚かましい行為をしてはならない。しかし、そんな事を気にせずとも割と直ぐに答えは出てきた。
『…どうやって、死ねばいいですか?天使様』
「そう言うと思ってちゃんと用意しといたで。」
指をパチンと鳴らすと、目の前に刀が出てきた。自分の着物も丁寧に死装束に代わっていた。そして切腹刀を握り、思い切り自身の腹へと突き刺した。
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あまね(プロフ) - すき (8月8日 4時) (レス) @page28 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉっさ(プロフ) - 彩雲朱瑠璃さん» 返信、遅くなってしまい申し訳御座いません。感想だけで無く、アドバイスまで頂けるなんて感無量です。その、助言有難く頂戴致します。更新は不定期になってしまいますが、乞うご期待を。 (2022年7月25日 12時) (レス) id: c787972aae (このIDを非表示/違反報告)
彩雲朱瑠璃(プロフ) - すごく面白くて好きです!あ、あともしかしたら1ページ目のはないちもんめのところ、「ちょっとおいで」じゃなくて「ちょっと来ておくれ」かもです。在住地違いなどもあるかもしれませんが… (2022年7月18日 21時) (レス) @page1 id: b1698b1cbf (このIDを非表示/違反報告)
ふぉっさ(プロフ) - 名無しくんさん» 返信遅くなり、申し訳ございません。初コメ有難うございます。更新は不定期ですが、これからも頑張りますので、乞うご期待を宜しくお願い致します。 (2022年5月22日 10時) (レス) id: c787972aae (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - とても素敵な作品ですね!私には書けない…すごいです!なんかこう…すごいです!(語彙力0)これからも頑張ってください! (2022年4月14日 22時) (レス) @page9 id: 271b6082c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:。 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年4月1日 12時