彼が消えて早5年。今私は...6【降谷零・安室透】

226.side降谷 ページ28

顔にかかっている髪をそっと横に払い、優しく頭を撫でる。









目覚めてくれてありがとう。...俺の娘に、生まれてきてくれてありがとう。









慈しむように、愛おしい、という感情を隠さずに、そっと澪に触れる。次いで、郁流へと手を伸ばした。







お父さん、と呼んでくれてありがとう。これからも澪とAを頼む。...生まれてきてくれてありがとう。









そんな気持ちを込めて郁流に触れれば、郁流はふにゃりと笑顔をみせた。そして、最後に透流。






情報提供ありがとう。やんちゃな所も含めて、完璧に俺に似たな。俺の元に生まれてきてくれてありがとう。...家族を、頼む。









わしゃわしゃと頭を撫でてやれば、少しムッとした表情になった。それを見て思わず苦笑する。









透流の送ってくれた情報のお陰で、かなり進んだ仕事。しかし、まだ何も終わっていない。









「もう、行かなきゃいけないんだ。...やらなくちゃいけないことがある。」









ひとしきり3つ子を慈しんだ後、キュッと表情を引き締めてそう呟いた。









離れ難く澪を撫でる手を止めないでいれば、思わずといったようにAに笑われて、ムッとしてAの方を振り返る。









Aを一瞥した後に、もう一度3つ子の方へ向き直り最後に、3人の額に1度ずつちゅ、とキスを落とす。









「お休み、いい夢を。」








キスを落とせば、眠りながらもふにゃふにゃとした笑みをみせた3人にそう告げ、ベッドから立ち上がり、近くの椅子に座っていたAの前に立った。







「...A」







名前を呼びながらグイッと椅子から引き上げてそのまま抱きしめる。









そのままAの体温を感じてから一瞬ぎゅっと強く抱き締め、今度は力を抜いて額同士を合わせた。

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