【呪術廻戦】呪術とギャル-0.4-

014：初めての隣人 ページ4

一本取り、咥えて、辞めた。


好きじゃないから。だけじゃない。
何故だか、吸う気にはなれないのだ。


Aは、咥えた煙草を二本指で挟みこみ、それを眺めた。


オッサンがいなくなるなんて、今回が初めてじゃない。
前からそういうフラッと居なくなることはあったんだ。
ただ、前と今回で違うのは、私がオッサンをただのオッサンじゃなくて特別なオッサンだと認識してしまっていること。
だって、あんな風に別れの言葉を言われたのは初めてだったから。

どうして、あんなこと言い残したんだよ。


『A、楽しくやれよ』なんて。


だから、オッサンの話を時雨さんに聞いた。
居場所は教えてくれなかったけど、オッサンが何者なのかを知った。
それでも、何も思わなかった。

ただ、ただ。
私は、あの別れの言葉を知りたかったそれだけなんだ。

だから、禪院家にもわざわざ行ってみた。
最近出禁喰らったけど。


ただ、ただ。



「_________どこいんだよ、オッサン」











「あ」


「あ」


1度目の『あ』で、Aは横の気配に気づき、2度目の『あ』で漸く声が出た。
『あ』を発した口を開けたまま、Aは横の人物を見遣る。

横というよりは、それはお隣さんに近く、Aはこの時初めて「隣の部屋って人いたのかよ」といえ考えが浮かんだのである。

そして、奇しくも横の人物はAが思った事と同じことを発した。

「私の部屋の隣って…人いたんですか…」

半信半疑に目を瞬かせ、ベランダから此方へ顔を覗かせている人物。

茶色の短い髪と、泣きぼくろ。
まだまだ起き抜けのようだが、Aは彼女を知っている。

ぐんっと目を一気に丸くさせ、Aは漸く声をあげた。


「天才少女の家入硝子チャン！！！」


その言葉には、さすがに彼女＿家入硝子も驚いたのか目を同じように丸くして声を漏らした。

「名前、覚えてたんですか」

「覚えてたっつーか、夜蛾ちゃんが丸つけしてた小テスト見て名前思い出してさ。へぇ、私の隣の部屋なんだ」

へーほーふーん、と彼女を興味深そうに見たあと、Aは訝しげな顔をして言った。

「硝子チャン…煙草吸うの？」

彼女の手元に目を落としAが言うと、硝子はハッとして焦った素振りを見せる。

「あ、いや、」

慌てた目でAを見たあと、程なくして彼女もハッとした。

「…可借夜先輩も、吸うんじゃないですか」

煙草。

手元を彼女に指され、Aは「あ、」と声を零す。

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