【呪術廻戦】呪術とギャル-0.4-

029：初めての燃える男5 ページ19

時雨は、やれやれと肩を竦める。
綺羅さん、可借夜綺羅は怒鳴ったりと怒りはしないものの、皮肉を山ほど並べてチクチクとコチラを刺す事に関しては右に出るものはいない。
きっと、甚爾の言う通り獄門疆を売って大金に変えた場合、本当に霊体として出てきて枕横に立つなりジリジリと皮肉を並べては悪夢まで見せてきそうだ。
やっぱり、早めに成仏させて閻魔大王あたりに面倒事の全てを押し付けてやりたい。

「ったくよぉ、去年のあの猿野郎まで名取吉祥に騙されてたんだもんなぁ」

今頃俺は大金持ちだったのに。
甚爾は空に吐き出す。

去年の出来事。
名取吉祥を筆頭とした、呪術師殺しもとい現在は静寂戦線へと名を変えた一件は表向きAの逸話へとなってしまったのだが、実際はAと甚爾の二人が片付けた山である。
しかし、Aはそれを一言も口に出していない。
きっと、AはAなりに何かを察して甚爾の存在を言わなかったのだろう。


奴は、俺が思ってる以上に聡い
野生の勘ってやつかな


動物みたいに喚き散らすAの姿を想像して、甚爾は思わず笑いそうになる。


あの日、甚爾は人知れず吉祥の死体が回収されないうちに、屋上に忍び込み懐を漁った。
情報が正しければ、コイツが隠し持っているはず。
しかし、結果的に言うと吉祥は何も持ち合わせていなかったのだ。

どっかに捨てたとか言わねーだろうな。
じきに、A達を医療班に預けたら死体回収に戻ってくる。時間がない。
血まみれの体に鞭を打ち辺りを探したが、やはり獄門疆はなかった。

「結局、ガセをつかまされたのかね」

「例の情報を俺達に売ったホームレス紛いの呪詛師も、結局は名取吉祥の術式に操られていた一人かもな」

時雨は、その日を思い出し締め括った。
吉祥が死んだ今となっては、真実は闇の中だ。

「だがまぁ、どこまでが嘘かは置いといて、こんな話が浮上する時点で名取吉祥＿＿いや、奴の“中身”は獄門疆について何かを知ってるんだろう」

相当手強いぞ、そいつ。
時雨は言うと、甚爾は相変わらず空を仰いだまま言った。

「なんとかなるさ。その為に、Aを鍛えてんだから」

「騙して呪具パクったくせにか？」

「人聞き悪いな、俺を使ったんだ。学生相手に金は取れねぇだろ？」

優しいねぇ、俺は。ニヤついた笑みで屁理屈を述べる。
どこが優しいんだか。

時雨は呆れたと横目で彼を見て、紫煙を吐き出す。

「…その為に…。ってのは、何か起きるのか？」

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