【呪術廻戦】呪術とギャル-0.4-

028：初めての燃える男4 ページ18

＿＿＿＿都内某所。


くたびれたスーツを着た男が煙草をふかす。
目の前では昼もすぎたというのに、“本物”のサラリーマンがベンチに座り空を眺めていた。

大丈夫か、こいつ。

自分も大概くたびれているとは思うが、目の前の本人は恐らく本当に正真正銘にくたびれているのだろう。
何より、力の抜けた体躯と持ったままで動かない缶コーヒーが全てを物語っている。


「よう」


突然、目の前に陰が差し込んだかと思えば、くたびれたサリーマンを遮るように目の前に男が割り込んできた。
ボサッとした黒髪と、上下スウェット姿、それと便所サンダル。
この独特な匂い…さては、パチンコ帰りだな。

「勝ったのか？」

許可してもいないのに、隣にどさりと腰を降ろした男相手に訊ねると男はあっさり負けたと述べた。

「パチで勝つわけねーだろ。俺はもうパチンコはやらない」

「お前それ先週も言ってたぞ」

補足すれば先々週も言っていた。
しかし、件の男はベンチにふんぞり返り「ンなもん忘れた〜」と呑気に吐き出す。

「...その割には随分機嫌が良さそうだな」

ほら、目が死んでない。
煙草の先を向けて言ってやると、男は少しだけ興味を持ったように体を浮かし「よく言うよ」と返し、ニヤついた顔で片手を差し出してきた。

「持ってねぇのかよ、全く」

言って、呆れたようにその手へと差し出してやる。
煙草と、ライター。

男はそれを受け取ると、慣れた手つきで一本取りだし吸いだした。

「お前が仕向けた癖に。そうだろ？時雨」

「違うね、お前がやれと言ったことを俺はただやっただけだ。電話をかけただけ。そうだろ？禪院」

「言ったろ、今は伏黒だ」

そうだった、間違えた。
スーツの男もとい時雨は、彼_伏黒甚爾と同じように煙草をふかして返した。

「お前が自分の仕事をAに回せと言った時は、本当に可笑しくなったのかと思ったよ」

「俺の手が離れても、あの馬鹿ちょっとは鍛えとかねぇと面白くないだろ」

「...お前そんなに面倒みいいなら自分の子供見てやれよ」

「おいおい、あの馬鹿を鍛えてんのは手にかけてる訳じゃねぇ。前の名取吉祥は外れだったが、アイツの名がより売れれば獄門疆を持った人間が近付いてくるかもしれないだろ」

そうすりゃ、一網打尽だ。

甚爾は、掌を裏返し親指と人差し指をくっつけ輪っかを作ってみせた。
その姿に時雨は肩を竦める。

「俺は金が欲しいんじゃなくて、綺羅さんを成仏させてやりたいだけなんだがな」

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