163:ギャルと魔物 ページ13
悠仁と触れた事で、Aに憑いた呪霊の生得領域と宿儺の生得領域が結ばれあった。だから、目の前のような事が起こっている。
そこはまさに、魔物の巣窟。
Aは、生唾を呑み込んだ。
何度も対面したことはあるが、あの得体の知れなさは慣れない。
人じゃない分、宿儺よりも恐怖を感じる。
知能も等級も高い呪霊なのだろうが、奴は喋らない。
静かにただじっとこちらを見ているだけ。
それがより恐怖を煽る。
あの穴のような瞳を眺めすぎると、精神がおかしくなりそうだ。
宿儺は顎を撫でる。
「俺がやる…までも無さそうか」
言った途端だった。
真人の肩から凄まじい程の血飛沫があがる。
まるでスプリンクラーのように。
肩にかけられていた鉤爪が、真人の肩を勢いよく裂いたのだろう。
七海は思わず自身の肩を摩った。
なんて力だ。鉤爪を引くだけであの威力。
あの五条悟が手も足も出なかった理由が漸く分かった。
得体が知れなさすぎる。
何を持ってして生まれたのかすら分からない。
真人は血飛沫の量に肩を抑え、ガタガタと震える。
後ろ目で漸く呪霊の姿を垣間見た。
穴のような瞳で、こちらをじっと見下ろす。
なんだコイツ、なんなんだよコイツ。
誰もが呼吸を忘れている中、宿儺だけが平然とした様子で横に居たAに話しかけた。
「小娘。お前、随分酷い傷を負っているな」
言われ、すぐに判断出来なかったものの、我に返り自身の片腕を見る。
妙な方向に曲がった腕は、もはや痛いのかどうかすら分からない。
「やったのは奴か?」
宿儺は真人の方へ顎をしゃくった。
何故、彼がこんな事を聞くのかも分からないままAは曖昧に頷く。
すると、宿儺はため息混じりにAの前にしゃがんだ。
「全く、世話が焼けるのも変わってないのか」
折れた片腕に宿儺が触れる。
数を数える暇もない速度で、腕は急速に元へと戻った。
なんて速度の反転術式…
Aは呆気に取られたまま、完治した腕を動かしてみる。
寸分の狂いもない。
「なんで、」
Aが尋ねるよりも前に、宿儺は立ち上がると「さて、」と呟いた。
彼が瞳に映すのは、血飛沫を撒き散らす真人。
「先程ので充分だと思ったが……気が変わった」
宿儺は鋭い顔つきになると、徐に指を振る。
「もう一発浴びせといてやろう」
瞬間、真人は傷を負った反対側の片方からも血飛沫を噴かせた。
領域が砕けると同時、宿儺と正体不明の呪霊は姿を消した。
彼らの前に、元の景色が戻る。
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鼻毛太郎(プロフ) - 華花。さん» コメント有難うございます!これでいいのか...?と悩む時期が続いていた中、温かいコメントを頂けて本当に泣くほど感謝してます;;現在5章目を製作中なので、しばしお待ちを…!今後もギャルと呪術を宜しくお願い致します! (2021年4月21日 11時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
華花。(プロフ) - いつも緊張して送れませんでしたが初コメント失礼します!もう作者様は言葉選びから構成まで最高すぎます…素敵な作品を生み出してくれてありがとうございます! (2021年4月20日 23時) (レス) id: 2bd2296ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2021年3月1日 0時