【呪術廻戦】ギャルと呪術-3-

126：ギャルと逕庭拳 ページ26

悠仁は数日前のアドバイスを思い出し、深く息を吐き出す。

｢悠仁、守りは捨てろ。攻撃に全振りするんだ｣

｢OK、大丈夫思い出した｣

目の前の呪霊を見据える悠仁。
Aは、確かに飄々としていて感覚で動いてる。
けれど、近接の指導は本当に的確で上手かった。
Aが何故ここまで強いのか、何故こうまでして指導が出来るのか。

それはまさに、Aがある時言っていた“師”のおかげなのだろう。

どんな人物かは知らないが、確実に血の滲む努力の賜物だ。


悠仁の両の拳に呪力が籠る。


｢相手を引きつける間、悠仁は呪力を高める事に集中しな。当たった際、より強い威力を生み出すから｣

Aが悠仁の隣で呪霊を見据えながら言う。
悠仁は返事をしなかったが、しっかりと聞いていた。

呪霊が向かい、ほぼ目の前までやってくる。

その距離数十センチにも満たない。
呪霊は確実に悠仁を殺す事が出来ると認識している。
そう、あとは攻撃を当てるだけなのだと。

それが油断なのだ。
Aの言う、隙なのだ。

Aが横で、満足気に口元を吊り上げた。
それがほぼ合図のように、悠仁は呪力を灯した拳を勢いよく振るう。

呪霊の攻撃よりも先に、悠仁は呪霊の体へと拳を打ち込んだ。

その拳は呪霊の体を弾かせ、拳へ遅れてやってきた次なる呪力の塊が体を貫いた。

｢よく出来ました｣

Aはニッと笑う。

一連の光景を眺めていた七海は、サングラスの奥で瞳を微かに小さくさせた。


五条さんが連れてきただけあって、基礎がかなり構築されている。
加えて、それだけじゃない。
彼のポテンシャルを理解し、的確に指導したのはあの人か…


七海はAに目を向ける。


流石、呪術界の天才だ


｢さぁて、次は私の番な｣

Aは水溜まりの呪霊に漸く声を掛けた。
呪霊の怒りはかなり高まり、無闇矢鱈に奇声をあげる。
しかし、それで恐慄くAではない。
瞳が弧を描くと同時、術式を結ぶ。

水溜まりから呪霊を引きずり出し、隠れる場所も何も無い地面へ縛り付ける。
呪霊は引力の力には抗えずただ藻掻くばかり。

Aは呪霊の前まで足を運び、足を振り上げたその時だった。

｢Aさん…？｣

Aの動きが止まる。
七海が異変に気づき、Aに声をかけた。
彼女の顔は、先程とは違い何処か強ばっている。

Aが淡々と七海に告げた。

｢七海、硝子に連絡を｣

緊迫とした表情。
Aはただ、藻掻く呪霊を見つめるばかり。

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