【呪術廻戦】ギャルと呪術-3-

117：ギャルと幼魚の巣窟 ページ17

＿＿＿＿。



不思議なものだ。

あれだけ突飛な事があったというのに、時間は平然とした顔をして過ぎていくのだから。

私と悟が偽物の恋人になり、1ヶ月がすぎた。

とはいっても、危惧していた様な波乱な展開は特になく、それはもう呆気ないくらいに私と悟の関係はやっぱり先輩と後輩という関係から対して変わっていなかった。

悟が隠し持っていた合鍵で自宅に突撃訪問してきたり、二人で数少ない休日を使い買い物へ出かけたり、映画を見たり、呑んだり。
やっぱり、以前とやっている事は変わっていない。



でも、手は繋いできたっけ。



『ね、A。繋いで』



人混みの中、長い指をゆっくりと絡めてきたかと思えば、指同士を絡ませ私の手をぎゅっと握る。
サングラスの奥で至極嬉しそうな瞳をしていたから、｢何してんだ｣なんて言えなくて馬鹿正直に｢う、うん｣とその手を受け入れてしまった。



後輩の手。
歳下の子。
でも、間違いなく男の子の手をしていて、私は嫌でも｢そうか、彼は男なのだ｣と認識させられた。





｢…げほッ、げほッ、｣

｢……何噎せてるんですか｣

隣に居た私の2個下の後輩、七海が不審な目を向けてくる。
私は、なんでもないと彼に言ったものの本当は違った。

悟が私に向けたあの嬉しそうな顔を思い出して、煙草を噎せたなんて話をしたら鼻で笑われる。


くそ……
アホ後輩相手に私は照れてんのか？


描き消すように首を振る。
ダメだ、仕事に集中しよう。


煙草を消すと、私は正面の建物に向き直った。

｢んじゃ、行こっか｣

映画館、『キネマシネマ』。
私が先に足を踏み入れると、同じように七海と連れてきた青年＿悠仁が映画館に入っていく。

本日は、三人で事件を片付けるのだ。









｢Aか！久しぶりだなぁ、まさかその歳で悪さしようってんじゃないだろうな？｣

A達が映画館へ入っていくと、既にそこでは警察が捜査を始めている様子だった。
Aを見て声をかけたのは、中年の刑事。
中年も後半に差し掛かっている、が正しそうだ。
如何にも、この現場の仕事は長いといった様子。

｢違うっつーの、普通に仕事だよ。し・ご・と｣

Aと刑事は親しげな様子だった。
悠仁は二人のやり取りを不思議そうに眺める。

言われた刑事は片眉をあげると、訝しげな顔でAの後ろに控えていた二人に目を向けた。

七海が会釈をするので、悠仁もそれに習い会釈をする。

｢仕事って…こんな子供もか？｣

118：ギャルと刑事→←116：ギャルとターミネーター

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す