089:ギャルと虚偽 ページ39
____。
始まりは、掃除道具入れの中。
隠れんぼをしようと言い出したのは、私からだったかな。
どんな因果か私たちは縦長の狭い掃除道具入れの中へ2人して入った。
そして、これもどんな因果か彼は私の目を真剣に見て言ったのだ。
「私たち、付き合いませんか?」
あまりの唐突さに、私は数秒顔を真っ赤にして固まっていたらしい。後で、コイツが笑いながら言っていたから本当だ。
「…なんで、私が好きって、アンタにバレてんの…?」
私はその言葉の後にこう言ったんだと。
これも、後で聞いた話。
私はあまりにも驚いて、バレたと勘違いし馬鹿正直に白状してしまったのだ。
要は両片思いってやつで。
すると、コイツは目をパチクリとさせたあと声を出し笑って、私の頬を撫でると____唇を重ねた。
掃除道具入れの中で。
長いこと、ずっと。
それが始まり。
夏油傑との、始まり。
____。
どうしよう、動けない。
不思議なことに、心臓だけが可笑しいぐらい動いている。
まるで、運動している真っ最中みたいだ。
夏油傑。
なんで、ここに。
いや、傑…なのだろうか。
分からない。
けど、ただ一つ分かるのは、自分が今とんでもない場に足を突っ込んだということ。
「夏油、」
「いい、君は座っていなよ」
後ろ手で制した、その先に居る者はパラソルが影になりよく見えない。
砂の上を歩き、夏油が寄ってくる。
いや、夏油と表現するのが正しいのか否か。
漸く片足が動いた。
けれど、前に進みたいAの意に反し、片足はずりと退いている。
夏油が前に立つ。
「久しぶりだね、A」
違う。
違う、違う、違う。
全部違う。何もかも違う。
呼び方も何もかも一緒だ。
でも、何かが決定的に違う。
すり、と夏油の手が頬を撫でた。
あの時の、掃除道具入れの時のように。
温度がある。
じゃあ、それは生きてるということ。
いや、まさか、そんな。
瞳の焦点が上手く合わない。
「A、」
何回も呼ばないで欲しい。
撫でないで欲しい。
そんな、優しく撫でないで。
「私たちが顔を合わせるのは、もう少し先の方がいい」
顔が近づく。
なんで、まだそんな似合わない格好してるの。
「必ず迎えに行こう、A」
あの時みたいに、唇が重ねられた。
違ったのは、あの時よりもどこか強引だった。
瞬間、ぷつんと思考が切れた。
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鼻毛太郎(プロフ) - Reginaさん» コメントありがとうございます!遊びに来て頂き誠に嬉しいです😭🤍作品の楽しみ方も、書いている側としてはとても嬉しく、本当余すことなく楽しんで頂けてとってもらぶ…… 本編、まだまだ続きますが、是非楽しんでいってください!! (2月1日 12時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
Regina(プロフ) - 高専編から読ませていただいて本編に来ました!内容はもちろんのこと、毎度イメソンが天才すぎてイメソン聞きながら読み返したりしてます!エンディング波のゆくさきで考えていらしたのも物語の深さにマッチする曲だと思うのですごく感動しました!!応援してます! (2月1日 11時) (レス) @page50 id: c70aaf3a6d (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 伝説のパンダさん» コメントありがとうございます!!いえいえ、全然大丈夫ですよ!!4本もシリーズがあるので、流石に間違えることもありますよね...私でさえ「これ3だっけ、4だっけ」ってなるので…0の方も読んでいただきとっても嬉しいです!!まだまだ続くので、今後もお楽しみに! (2021年3月8日 9時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
伝説のパンダ - 申し訳ありません。4のほうにコメントしたつもりが、なんらかの手違いでこちらにコメントを飛ばしてしまったようです。本当に失礼なことを…次はもう少し興奮が引いたときにコメントします…すみません…。 (2021年3月8日 8時) (レス) id: ec9a309dee (このIDを非表示/違反報告)
伝説のパンダ - もんのすごく面白いです!!!夢小説はめったに読まないので、まぁ暇つぶしに…と思って読み始めたのがこちらの作品で、不覚にも大沼にハマってしまいました…本当に好きです!0のほうのお話、パパ黒大好きなのでそちらも凄く好きです!今後も応援してます! (2021年3月8日 8時) (レス) id: ec9a309dee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月19日 3時