【呪術廻戦】ギャルと呪術-2-

096：ギャルと駆け引き ページ46

＿＿＿＿。

｢貴様なんのつもりだ？｣

南国リゾートさながらの領域内で、漏湖が尋ねた。
漏湖の首と体はまだ正常に繋がっていない。
そろそろ別の地へ、療養に出かけるのもいいかもしれない。

｢なんのって、何かな？｣

折り畳み式の椅子に腰掛け、夏油はわざとらしく笑う。
思わず漏湖は顔を顰める。
相変わらず、嫌な男だ。

｢夏油、あんまり漏湖を虐めるなよ｣

夏油の後ろで、ぱたりと本が閉じられる。
優しげな声音ではあるが、この男＿＿真人の優しさは全てが表面的だ。
それも、薄くて薄くてとても薄い。
付け焼き刃の優しさ。
仕方ない、まだ生まれたばかりなのだから。

夏油はそれを分かっていて、｢そうだね｣と返す。

｢それに、俺も漏湖の意見には賛成だよ。キスなんかしちゃってさ。気絶させて、手も出さずに…｣

真人はニヤついた笑みを浮かべる。

｢“夏油傑”のつもりかい？｣

夏油はにこりと笑みを浮かべ返すだけ。
漏湖の横で佇んでいた白い呪霊＿＿花御が奇怪な声を紡いだ。

それは言葉とは呼べないものの、脳では言葉と変換出来る不思議な言語。

『可借夜Aを、取り込めば良かったのでは？』

｢難しいね、それは｣

夏油が額の縫い目に触れる。

｢この姿であれば、暫く彼女を思い通りに出来るが………中身がバレた時、恐らく彼女は自身の身を顧みず領域展開をする。その場合、ここに居る者全員が死ぬね｣

夏油………いや、夏油であり夏油ではない者。
彼の言葉に、場にいた全員が動揺した。

ここにいる者が全て並大抵の枠を超えているというのに、それを殺すことが出来ると。
彼は、恐らくなんて言葉は使わず断言した。

｢体験者が言うんだ、間違いない｣

｢その言い方だと、あの女が五条悟よりも強いという話になるが？...大体、体験者だと？当の貴様は、死んでないではないか」

可笑しな話を言うな。
漏湖は、ふんと鼻を鳴らす。
しかし、夏油は顔色一つ変えず漏湖の言葉に返した。

「勘違いするな。誰も、私自身が挑んだとは言ってないだろう」

とんとん、と夏油はこめかみを叩いた。

「ガワをだよ。昔、彼女欲しさにぶつけた事がある」

夏油傑の“中身”が言う。
そして、夏油はにこりと笑いながら「そうしたら、何が因果か彼女を覚醒させてしまってね」と続けた。

「呆気なく負けた。勿論、全盛期の彼女に与えられたのは一級までだ。五条悟の方が断然強いよ」



私の時のように、覚醒しなければね。


夏油はにたりと笑う。

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