045:ギャルと流転輪廻 ページ45
動けばAを殺される。
だが、動かなくても殺される。
これほどまでに絶望的で、力の差を感じた状況はあっただろうか。
片手一本で締め上げられたAが宙に浮く。
残った力で、宿儺の腕を掴んだ。
力強く握り、彼の腕にAの爪が食い込む。
しかし、それでも宿儺は動じない。
Aは彼のもう片方の腕を見て顔を顰めた。
「…ッ、腕、」
戻ってんじゃねぇか。
絞り出すような声音で言おうとしたが、最後まで出る事は無かった。
本当は事が終わり次第、反転術式持ちの硝子に治してもらおうと思っていた。
だけど、それも必要ないらしい。
段々、意識が朦朧としてきた。
左腕もかなり熱を持ち始めている。
暫くは、大きな呪力も使えないだろう。
瞳の先で、宿儺の赤い瞳が光る。
次第に、自分の中で力が抜けていくのを感じた。
「死ぬのが怖いか?」
宿儺は至極真面目な顔で言った。
何言ってんだコイツ。
Aは鼻で笑う。
「うるせー…クソザコ…」
宿儺は合図を見せる事もなく一層力を込めた。
Aの細い首では到底、もう______
どこまでも黒い穴。
宿儺は気付くと、それと目が合っていた。
咄嗟の事に、腕の力を弛める。
Aのすぐ後ろから、こちらを”黒い穴”が覗き込んでいた。
一帯の景色も変わっている。
「…生得…領域…」
そして、宿儺は呟いたと同時全てを理解したのだ。
こちらを覗いているのは、”黒い穴”ではない。
瞳だ。
どこまでも真っ黒な穴をした瞳。
まるで、瞳という球体を抉り出した際に見られるような光景。
瞳はじっと、静かに、宿儺を見ている。
宿儺は、この”呪霊”を知っていた。
平安の時代、全盛期の記憶が宿儺の脳裏を巡る。
『…死ぬのか?』
『そうみたい…』
小さな幼子であった。
四つ腕の中の少女に尋ねる。
少女の命はそう長くない。
顔まで浮かぶ紋様がそれを表していた。
『…でも、死んだら…生まれ変われるから……そうしたら、また宿儺に会いに行くよ。私、なんでも引き寄せる事が出来るからね』
少女の手は、宿儺の指を握っていた。
どんどん力を失っていく。
『………次は、普通の女の子に生まれられたら、いいね』
少女が最期に言った言葉は何だったか。
自分以外に殺されるのならば、いっそ。
この手で。
『全く……どこまでも憎たらしい、愚かな小娘だ______次は、俺から見つけよう』
そうして、少女の喉を掻き切った。
そうか。
この女は____
2900人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鼻毛太郎(プロフ) - 麗華さん» コメントありがとうございます!🙌うん億年前に書いたイラスト、そういえばあったなとコメントで思い出しました笑刺さったようでとても嬉しいです🥺まだまだ長く続くシリーズ、ぜひお楽しみ頂けたら幸いです! (8月17日 12時) (レス) @page49 id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
麗華(プロフ) - 夢主ちゃんの過去編からみてイラストを見ましたがめちゃどタイプです………これからも応援してます〜! (8月17日 9時) (レス) @page49 id: bc106b5b68 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 美咲さん» コメントありがとうございます…!凄く有難いお言葉頂けて感激です😭😭長く続くシリーズ作品ではありますが、ぜひ今後もお付き合い頂けると嬉しいです…!!🌸🌸 (2022年1月2日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - 話の構成がしっかりしててそれぞれの物語があってこんなに面白くて読みやすくて引き込まれる作品は初めてです…!!素敵な作品をありがとうございます最高です!体調にはどうかお気をつけて!! (2022年1月2日 0時) (レス) @page49 id: f6fdf86c66 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - yuuna1202さん» ありがとうございますーー!!;;今後もギャル先輩と後輩悟くんの二人を是非見届けてあげてください…! (2020年12月9日 20時) (レス) id: 2a028e4c13 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年11月18日 23時