【呪術廻戦】呪術とギャル-0-

032：闊達明朗 ページ32

｢んで、｣

甚爾はだらりと床に足を投げ出す。

｢お前が機嫌良いのは分かった。その単独任務と時間が無いってのはどう結びつくんだ？｣

ペットボトルの水を飲むAに尋ねる。
すると、Aは蓋を締めながら｢それがさぁ｣と気怠げに口を開いた。

｢術式の使用は禁止されてんだよね｣

｢なるほど、大体読めた｣

甚爾はAの方へ手を差し出しながら言う。
その手にAは顔を顰めたので、甚爾は気が利かねーなと言いながら言葉を続けた。

｢水だよ、それ寄越せ｣

｢え゛！？これ私が飲んだやつなんだけど！？関節キスじゃん、無理すぎ！！｣

｢お前、見た目に似合わずそんな事気にすんのか…？｣

｢……死ねよ、本当｣

本気で甚爾が意外そうな顔をしたので、Aはムカつき半分呆れてペットボトルを甚爾へ投げた。
受け取った甚爾は、自然な手つきでペットボトルに口をつける。
Aは突然恥ずかしくなり、顔を背けた。

｢術式が禁止されてるから、近接だけは満足いくよう強化したいってことか。へぇ、術式使えねーなら俺とそう大差ねぇな｣

Aは、ムッと顔を顰めながら｢今に見てろ、絶対泣かす｣と小さく呟く。
そんなAの言葉を聞き、ふと甚爾は口を開いた。

｢お前は、俺に“あれこれ”言わねーんだな｣

Aは｢…はぁ？｣と大袈裟に顔を歪めた。
突然このオッサン、何を言い出すんだ。

｢何、あれこれって。そろそろ自分家帰れや、とかってこと？｣

｢ちげーよ｣

｢じゃあ何｣

尋ねると、甚爾はすぐには口を開かず暫く考え込んでいた。
あまりにも甚爾が言いあぐねているので、Aは｢言い難いことか？｣と尋ね返した。
オッサンにしては珍しいと思ったのだ。
甚爾は、A相手にずけずけと物を言う。
そんな人間が、言葉を探しているなんて。

甚爾はその言葉に、｢いいや、別に俺には関係ないしな｣と呟くと続けた。

｢大抵、呪力がある人間は呪力が無い俺みたいな人間と同格にされると、親の仇かってぐらい嫌うんだよ｣

そして、甚爾は｢俺が居た場所は、そういう奴らしか居なかった｣と付け足した。

｢だから、俺は“あれこれ”言わねーんだなって言ったんだ｣

なんて事も無いような顔で欠伸をし、頭を搔く。
すると、言った途端Aが目の前で大袈裟に顔を歪めた。
いつも通りの声音で｢はぁ？オッサン超意味わかんないんですけど｣と悪態をつく。

｢呪力があるとかないとか、所詮人間の時点で一緒じゃん｣

甚爾は目を丸くした。

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