【呪術廻戦】呪術とギャル-0-

049：有為転変 ページ49

「ギャルが鼻血は美に反する」

「お前がたまに出すその訳わかんねぇ持論なんなんだよ…」

甚爾は言いながら、あーこら擦んなとAの手を掴み辞めさせる。
止まらない鼻血に、甚爾は「勿体ねぇな」とため息混じりに吐き出した。
そして、突然顔を近づけるとAの鼻下をべろりと舐めた。

思わず、Aは座ったまま逃げるように甚爾から離れた。

「な、なな、な、何してんだ、オッサン…！？」

ばくばくと心臓を鳴らすAとは裏腹に、甚爾は平然とした顔で「あ？」と声を出す。

「何って、止まんねーから舐めただけだろ」

「イカれてやがる…」

「よく言われる」

甚爾は、顔に似合わない爽やかな笑みを貼り付け言った。
Aは鼻下を衣服の裾で拭いながら、「オッサン、誰にでもこんな事すんの？」と尋ねた。

「しねーよ。衛生観念ヤバすぎだろ」

私の鼻血舐める時点でヤバいだろとAは思ったが、敢えて言わないことにした。

「親猫が子猫に毛繕いしてやんのと同じだろ」

「うっわ、その前にJKなんですけど。捕まんぞ」

甚爾はAの言葉に、何を根拠に「捕まんねーよ、アホ」と返した。
そんな言葉許されんのは、ルパンだけだろとAは小さく零す。

ふと、脈絡も無しに甚爾が「お前、」と口を開いた。

「ババァと同じタイプかと思ってたが、違うな」

Aは首を傾げる。

「お前はババァと違って、パワーがデカい。かなり近接向きって話だよ。その代わり、広範囲の攻撃は苦手ってとこか？」

「術式あんま使わないからよく分かんない」

「まぁ、俺はそこんとこ詳しくねーからな。…知識がない訳でもねぇが。多分、お前は思ってる以上に馬鹿でかい呪力があるはずだ」

Aはよく分からないまま、ふぅんと相槌を打つ。
甚爾も言いたい事を言い終えたからか、立ち上がると転がった二本の箒の柄を持ち上げる。

「今日はこの辺にしとくか」

「オッサン、」

甚爾の後ろ背に、Aは呼び掛けた。
甚爾が振り向く。



「母さんは、どうして死んだの？」



それは、Aは生まれて初めて＿＿＿いや、この世界に入り初めて尋ねた言葉だった。

甚爾は、少し迷った。
彼にしては珍しく、言うか言わまいかを迷ったのだ。
Aが真実を知り、復讐を誓った場合。
死んだ母親は恐らくそれを望まない。

世話になった人だ。
やっぱり、その辺りは気が引ける。

けど、この世界に居るならいつかは知る事になる。


「『獄門疆』。ババァは、それを巡って死んだ」

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