【呪術廻戦】呪術とギャル-0-

047：弱点保険 ページ47

オッサンは言うと、｢貸せ｣と手を差し出した。
呆気に取られっぱなしで、素直に夢浮橋を渡す。

オッサンは夢浮橋を受け取ると、いつもの様に獣みたいな笑みを見せて｢やっぱ、こっちの方が俺向きだな｣と呟いた。

｢ババアの術式は、パワーはねぇが広範囲攻撃に特化してた。だから、近距離に持ち込まれるとかなり苦手でな。それを補う為に、夢浮橋を使っていた｣

そして、オッサンは夢浮橋を手持ち無沙汰にくるくると回しながら、さっき更地にした山に近づく。

｢分かり易く強めに叩くからな｣

言ったと同時、オッサンは夢浮橋を振り上げ更地を叩いた。
途端、まるで爆弾でも降らせたが如く更地は弾け飛び、最後にはクレーターを作り上げた。

もう何が何だか。
とにかく、夢浮橋も桐壺も私が知ってる呪具のレベルを優に越えている。

オッサンはからりと笑いながら、｢こんなんで人間ぶっ叩かれたら、何かで防がねぇ限り一溜りもねぇな｣と付け足す。

｢…恐ろしい笑顔で恐ろしい事言うなよ｣

｢コイツは元の人間のパワーが無くとも威力を発揮するから、近距離専門だ。パワーがある奴が使えば、より威力が傘増しされる。ただし、桐壺と違ってかなり相手に接近しなきゃならねぇのが欠点だな｣

なるほど、だからオッサンが“俺向き”って言ったわけか

オッサンの近接はもうそれはマジで強い。
だからこそ、オッサンには悪い癖がある。

それは、守備を捨てて相手をギリギリまで引き付け攻撃する癖。

こんだけ毎日バカスカ殴られて扱かれてるからこそ分かった事だ。
でも、これが滅茶苦茶理にかなってる。
特に、オッサンの動体視力が合わさるのが厄介だ。

だって、私の攻撃よりもオッサンの方が早いから。

あの呪具使われて、オッサンの速度で攻撃されたらマジで一溜りもねぇな…

思わずゾッとしてしまうね。

｢まぁだが、ここまでの話は術式も呪力も持ってねぇ奴の話だ。桐壺も夢浮橋も、術式を乗せりゃもっと別の効果が出るだろうがな｣

｢どうやんの？｣

聞くと、こつんと額を小突かれた。

｢俺が知ってるわけねーだろ｣

｢うっぜ…｣

言ってやると、オッサンは｢おうおう、好きなだけ言えや｣とにたにた笑いながら言ってきた。
そして、オッサンは｢さて、｣と息つく。

｢その呪具、使いてぇだろ？｣

閉じたデカい扇子、桐壺を支えに頬杖を付きながらオッサンは言った。

なんでこの人、私の事なんでも知ってるみたいな顔すんだろうなぁ…

本当、うぜぇ。
私は、こくと頷く。

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