029:疾風迅雷 ページ29
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今日も、寺院『月伽蓬莱院』の本堂では甚爾とAによる訓練が繰り広げられていた。
「A、お前機嫌が良さそうだな?」
体を軽々と反転させ、Aからの攻撃を避ける。
すでに一時間が経過し、体がそれなりに温まってきているからかAの動きが良くなってきている。
甚爾も、そろそろ最小限の動きでやり過ごす訳にもいかなくなり、初めよりは動くようになっていた。
とはいっても、飛びついてくる猫の子をだた避ける程度の動きではあったが。
「分かる…ッ?」
避けられたAは、すぐに床を蹴り甚爾を追う。
月曜から金曜の平日五日間は、授業が終わり次第Aは今まで寮に帰宅していた。
だが、今は甚爾との訓練のために一旦自宅へ帰り、気が済むまで甚爾と組み手をする。
既に30を優に越えるほど、甚爾には負けっぱなしであった。
それ即ち、彼にその数だけ手を出されるという換算なのだが、それでもAはめげなかった。
一発でも殴れれば、そんな数どうだっていい。
「あぁ。ずっと、馬鹿みてぇにニヤついてるもんな」
ブスだなぁ、と付け足す甚爾。
オッサン、マジでデリカシーが欠如してるよな。
小学生の時、特に意味なく女の子泣かしてただろ。俺何も悪い事してませんけど?って顔してさ。
「好きに言っとけば?その顔面、絶対殴ってやっから」
甚爾目掛け、蹴りを食らわそうとする。
甚爾は体を仰け反らせ、その蹴りを避けると同時に甚爾も蹴りを繰り出した。
しかし、これがAの算段。
「ばーか」
にた、と笑うA。
何度も甚爾と闘い続けAは学んでいるのだ。
避けた後に、絶対攻撃をしてくる。けれど、基本的にオッサンは私のことを舐めている。
きっと、この攻撃は私にぶつける前提の攻撃だ。
いつまでも避けられないと思ってんなよ…!
繰り出された甚爾の足を掴み、彼の膝に拳をぶつけようと振るったその時だった。
「ガキがしゃしゃんな」
「は……ッ!!?」
Aが気づいた時にはもう遅い。
甚爾は、掴まれた足を上手く利用し体重を前にかけると、Aを床に押し倒した。
そして、間髪入れず彼女の肩に打撃を与える。
「ッッ……!!!」
肩から腕にかけ、ビリビリと電撃が走ったかと思えば拳に全く力が入らなくなった。
味わったことのない激痛がAを襲う。
ほぼ生理的に、Aは自由の利く片手で肩を抑えた。
その姿に、思わず甚爾は「…悪ィ、やり過ぎた」と呟くとAを起き上がらせる。
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鼻毛太郎(プロフ) - ぱぴこさん» コメントありがとうございます🙌🤍強くてかっこいいクズが好きなのでこの結果なのですが、気に入っていただけたならばとても嬉しいです…!是非、引き続き楽しんで頂けたら幸いです^^ (1月21日 2時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - パパ黒かっこよすぎ (1月21日 0時) (レス) @page34 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 黒さん» コメントありがとうございます!🙌裏側ではいつかに向け百鬼夜行をちまちま書き溜めておりますので、いつか皆さんにお披露目できる日を楽しみにしております😌それまで暫しお待ちを…! (2022年2月16日 21時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
黒 - ギャル夢めっちゃ好きです!!🥺鼻毛太郎さんがかく百鬼夜行楽しみです😚 (2022年2月16日 17時) (レス) id: ab6a15c201 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あーさん» 頭いいなんて言われてだいぶニマニマしてます😎とはいいつつ、本人は過去に適当に張った伏線のおかげで矛盾だったり色々苦しめられているんですけどね!!笑皆さんが読んでくれれば私は嬉しいんです🥺素敵なコメントありがとうございました!🌸 (2022年1月31日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月27日 22時