024:術式無能 ページ24
夜蛾は、Aが嬉しそうに呟く言葉が全く聞き取れなかった。
けれど、今Aは完全に成長を果たしていることは確かだ。
一体、誰が何をどうやって…
この二日間に、Aに何があったと言うのだ。
夜蛾が術式を解くと、Aの下でジタバタ暴れていた呪骸が大人しくなった。
「いやぁ、私凄くね?開花しちゃったかな〜!!ね、夜蛾さ、この際一級ぐらいの呪骸とやらせてよ。今の私ならやっちまうかもよ〜」
Aは自身の尻に敷いていた呪骸を手に、夜蛾をいやらしく小突く。
しかし、夜蛾は一切動じることなく、Aの手から呪骸を没収すると「それはない」と断言した。
「なんでよ!!」
「今のは、精々四級程度の設定にしてある呪骸だからだ。お前は、それ以下の想定だったからな」
「うぜぇ、本物の蝶野の方がまだ可愛げあるわ」
「蝶野ではない」
夜蛾の後ろで、Aは中指を立てている。
気づいていないと思っているのか、このクソガキめ。
内心思いつつ、夜蛾は「A」と呼んだ。
「あ?」
「そろそろ、術式の訓練を始めるか」
_____。
「術式は相変わらず下手くそだな」
「悪かっ、ぎゃッ!!」
アルミ缶がAの頭部に直撃し、乾いた金属音が鳴り響いた。
「こンのクソッッ!!」
Aはこれみよがしにガンガンッとアルミ缶を踏みつけ潰す。これには、アルミ缶が抵抗する手段もなく、虚しくもぺしゃんこになってしまう。
「自分でぶつけた術式が上手くいかなかったくせに」
「うるせぇ!!!」
夜蛾の言葉にAが吠えた。
とはいえ、本当の話だ。
アルミ缶を用いて、術式を缶にぶつけるそりゃもう至極簡単な訓練をしていた。
対象が動かないんだから、これほどまでに簡単な訓練は無いというのに、Aはやっぱり上手く術式をコントロール出来ていなかった。
「お前の言う、秘密の特訓……術式も特訓したらどうだ」
夜蛾は短くため息を漏らす。
すると、Aは「…そりゃ無理だ」と小さく呟いた。
「?」
「……術式は、アイツ専門じゃないから」
アイツ。
Aの特訓には、相手が居るのか。
悟った夜蛾は、言葉のその先を尋ねようと口を開いた。
瞬間、修練場の扉がガラリと開く。
「夜蛾さん、ちょっと」
現れたのは、高専専属の補助監督『
冴えないし、特にこれといった特徴のない男。
「少し出てくる」
「あ、うん…」
修練場を出ていく夜蛾の背を、Aは見つめていた。
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鼻毛太郎(プロフ) - ぱぴこさん» コメントありがとうございます🙌🤍強くてかっこいいクズが好きなのでこの結果なのですが、気に入っていただけたならばとても嬉しいです…!是非、引き続き楽しんで頂けたら幸いです^^ (1月21日 2時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - パパ黒かっこよすぎ (1月21日 0時) (レス) @page34 id: c43eafab12 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - 黒さん» コメントありがとうございます!🙌裏側ではいつかに向け百鬼夜行をちまちま書き溜めておりますので、いつか皆さんにお披露目できる日を楽しみにしております😌それまで暫しお待ちを…! (2022年2月16日 21時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
黒 - ギャル夢めっちゃ好きです!!🥺鼻毛太郎さんがかく百鬼夜行楽しみです😚 (2022年2月16日 17時) (レス) id: ab6a15c201 (このIDを非表示/違反報告)
鼻毛太郎(プロフ) - あーさん» 頭いいなんて言われてだいぶニマニマしてます😎とはいいつつ、本人は過去に適当に張った伏線のおかげで矛盾だったり色々苦しめられているんですけどね!!笑皆さんが読んでくれれば私は嬉しいんです🥺素敵なコメントありがとうございました!🌸 (2022年1月31日 1時) (レス) id: 642d1e8526 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼻毛太郎 | 作成日時:2020年12月27日 22時