ルビーは語る ページ15
それからはよく覚えていない。
ただ、次の瞬間には体温を失っていく彼女と
その彼女の細い首を絞める、自分の手があった。
おそ松は自分が今何をしたのか理解が出来ず、彼女に何度も問い掛けるが
彼女はもう返事を返さず、まるで人形のように生気の無い瞳をしていた______
おそ松が初めて人に手を掛けた、苦々しい思い出。
十四松もそれは知っている。
何故ならおそ松が前に話してくれたから。
あの出来事以来、おそ松は少し変わってしまった。
あの出来事があって、おそ松はこの世界に踏み込んだ。
おそ松にまって『女』とは自分を惑わし、裏切る最低な生き物であり、絶対に深くは関わりたくない存在。
だからこそ今まで関係は持ちさえすれど、数週間も持たず次へと乗り換えては己の欲望を満たす程度に遊ぶだけだったのに。
でもAだけは、どうしてもそうは出来なかった。
彼女だけはいつものように誘えなかった。
彼女だけはいつものように触れられなかった。
自分が触れたら、穢れるような気がして。
あの純粋な笑顔が歪んでしまうような、そんな気がして。
近付く事すらもおそ松にとっては罪な気がして、なかなか近付けず
ただただ彼女の欲しい物を欲しいままに渡すだけの日々。
正直おそ松も自分で『何やってんだ』と思う時もあった。
胸が苦しくなる度に、彼女をこの手に掛けようと何度も、何度も思って、何度も、何度も彼女を脳内で殺した。
でもそれでもこの気持ちは消えず、そこにあり続けた。
おそ松はそれが大変目障りであり、同時に屈辱的だった。
「馬鹿だよねぇ…さっさと認めちゃえば良かったのにさ。なんとなくAちゃんが俺に好意を持ってるのもわかってたのに……
多分俺、怖かったんだ。前みたいに裏切られるのが」
おそ松は物悲しそうに微笑みながらそう語る。
脳裏に浮かぶは全ての元凶である長い髪の彼女。
自分を裏切った女。
そうして次に浮かぶは、無邪気なAの笑顔。
彼女はいつだって子供のように無邪気で、無垢で。
そんな彼女にまた手のひら返されるのが、おそ松はただ怖かった。
そんな事になったら、おそ松はもう正気でいられる自信が無かった。
この手で彼女を殺すかもしれない、恐ろしかった。
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柊(プロフ) - 朝から暇潰しにと軽い気持ちで読み進めてたんですが、書き方や設定の作り込みにすごく惹き込まれて一気に最終章まで読み進めてしまいました……特に主人公対兄松それぞれのやり取りにはすごく圧巻したというか、兎にも角にも笑いあり感動ありですごく面白かったです;; (2022年4月30日 0時) (レス) @page50 id: a82882ac10 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - トマトの王様さん» コメントありがとうございます!終わってしまいました…!楽しんで頂けたようで良かったです^^ここまで読んで下さりありがとうございました〜!! (2019年8月1日 1時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
トマトの王様 - うわあぁぁぁぁぁ!遂に終わってしまった…!( ;∀;)読んでてとても楽しかったです。お疲れ様でした! (2019年7月31日 14時) (レス) id: 5390b171c6 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - arumo?さん» コメントありがとうございます!お疲れ様ですっ( ˇωˇ ) (2018年10月10日 0時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
arumo?(プロフ) - お疲れ様です! (2018年9月29日 11時) (レス) id: ee4365cb85 (このIDを非表示/違反報告)
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