エメラルドは信用はしていない ページ30
「…ねぇ、チョロ松」
「あン?」
またブツブツと文句を言い始めるチョロ松に彼女は再び声を掛ける。
そしてまたしても威圧的に彼女に返答してしまい、チョロ松は内心頭を抱えていたが、やはり彼女は気にする様子もなく無表情で続けた。
「ちょっとあの建物に戻ってもいいかしら?」
「………は?」
…途端にチョロ松の眉が釣り上がる。
反応はわかりきっていたが予想通りの反応に、彼女も思わず眉を顰めた。
「…何の為に?」
「ぬいぐるみよ、ぬいぐるみ。アレ取りに行くだけよ」
低い声でその理由を尋ねるチョロ松。
それに対し彼女は素直に答えたつもりだったが、チョロ松の不信感は拭えなかった。
彼女は他人。自分のように血を分けたワケでも家族でもない、ただの他人。
今では松野ファミリーの一員となってはいるが、果たして心の底から彼女は自分達の事を仲間だと思っているのか。
彼女の事を心の中で慕っているチョロ松。
しかしそれとコレとでは話は別で、そこら辺についてはあまり信用はしていなかった。
第一、普段はその身体に見合わぬ子供のような振る舞いをしていたというのに、仕事に入った途端にコレだ。
どちらが本性で、どちらが演技なのかチョロ松にはわからない。
もしかしたらどちらも演技なのかもしれないが。
しかしそれでもいいと思い始めている自分がいて、チョロ松は自分で自分をビンタしてやりたい気分に陥る。
眉根に力を入れて顔を強ばらせ、チョロ松は彼女を睨むと、彼女は困ったように頬を掻いた。
「そんな事言って…逃げるつもりだろ?」
「………………」
彼女からの返事はなかった。
何故か黙ってしまい、チョロ松の不安が募る。
対して彼女は頬を掻いたポーズのまま固まっていたが
ふと視線を落として項垂れて、おもむろに上げていた手をゆっくり下ろす。
下りた手の指先がガンホルダーに入った銃が触れ
チョロ松は嫌な汗を額に滲ませ、自分もポケットの銃に触れた。
静寂。張り詰めた空気が2人を包む。
しかし少しでも動いてしまえばその空気が壊れてしまうかように脆く、薄い。まるでプレパラートのようだ。
そんな空気の中、お互い何も喋る事無く、ただただ銃を引き抜く瞬間を待つ。
「…………逃げる、かぁ」
やがて彼女はその空気をバリバリに破くかのように鋭い声で呟く。
そうして彼女はゆっくり、ゆっくりと顔を上げると
ニコリ、といつもの無邪気な微笑みを浮かべた。
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*IJu*(プロフ) - 柚原きこさん» 御指摘コメントありがとうございます!間違ってますね……寝惚けてたのかな( ˇωˇ ) わざわざ教えて下さりありがとうです!早速直しに行ってきます! (2018年1月17日 23時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
柚原きこ - コメント失礼します。ページ27の7行目の『怒っている』が『起こっている』になっていますよ。 (2018年1月10日 23時) (レス) id: c3c5b55407 (このIDを非表示/違反報告)
柚原きこ - *IJu*さん» ありがとうございます!この作品を心から応援してます!更新、頑張ってください。 (2018年1月4日 21時) (レス) id: c3c5b55407 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - 柚原きこさん» コメントありがとうございます〜! こんな作品でよろしければ是非どうぞ〜! (2018年1月4日 19時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
柚原きこ - この作品のリンクとどういうものなのかを簡単に書かせていただきたいのです。もしよかったらお返事いただけると嬉しいです。長文、すみませんでした。 (2018年1月4日 17時) (レス) id: 1cca1a4110 (このIDを非表示/違反報告)
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