エメラルドは理解を諦めた ページ23
「ほら、行くわよチェリー松。
私が先導するから、アンタは後ろでサポートしてて」
「は、はい……」
結局彼女の豹変について聞く事も出来ず、気付けばチョロ松とAの立場は逆転していた。
応急処置を完了させると、彼女は持っていたナイフを握り締め階段を上り始める。
まだ動揺しているチョロ松は何処か気の抜けた返事を返しながら彼女の後を追い掛けた。
だがふと彼女の手にあの黒いぬいぐるみが抱かれていない事に気付き、チョロ松は思わず声を掛けた。
「お…おい、クソ女!」
「クソ女って言わないで。
………で、何?」
「お前、あのボロ布はどうしたんだよ?さっきまで抱いてたろ?」
「ボロ布……」
『ボロ布』という言葉に反応し、彼女の眉根が釣り上がる。
だが今この場では指摘する事ではないと考えたのか、彼女は立ち止まってすぐに眉間に寄っていたシワを解くと、面倒くさそうな表情をしながら答えた。
「邪魔だったから、下に置いて来たわ」
「えっ…?」
「…って、何でそんな顔するのよ?捨てろって言ったのはアンタじゃない。だから置いて来てやったのよ」
チョロ松はまた驚きの表情を見せる。
建物に侵入する前の彼女とは全く真逆の事を言っていたからだ。
いや、その発言だけじゃない。
何もかもが普段の彼女とは違っていた。
表情も、構えも、言葉遣いも、態度も。
いつもの身体に似合わぬ幼児脳のとは違い、その容姿に相応しい言動をしていた。
まるで一気に大人へと成長したかのようにさえ思えて、チョロ松は暫くじっと彼女を見つめた。
するとAはまた面倒くさそうな顔をして不快そうに眉を顰めると、くるりと踵を返して再び階段を上り始める。
「まぁ、ぬいぐるみなんて盗む輩なんていないでしょうし、無くなったとしてもまた違うのを寄越せばいい。
犹筬瓩いれば結局は何でもいいのよ。
……とは言っても、あのぬいぐるみも結構気に入ってるみたいだけれど」
「は……は?」
最後らへんの独り言の様にこぼした彼女の言葉に、チョロ松はもう頭が理解するのを諦めていた。
終始話の内容がさっぱりわからず、首を傾げるばかりのチョロ松。
そんな彼を構わず置いて、ズカズカ進む彼女。
だからチョロ松は知らなかった。
この時、彼女が一体どんな表情をしていたのか。
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*IJu*(プロフ) - 柚原きこさん» 御指摘コメントありがとうございます!間違ってますね……寝惚けてたのかな( ˇωˇ ) わざわざ教えて下さりありがとうです!早速直しに行ってきます! (2018年1月17日 23時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
柚原きこ - コメント失礼します。ページ27の7行目の『怒っている』が『起こっている』になっていますよ。 (2018年1月10日 23時) (レス) id: c3c5b55407 (このIDを非表示/違反報告)
柚原きこ - *IJu*さん» ありがとうございます!この作品を心から応援してます!更新、頑張ってください。 (2018年1月4日 21時) (レス) id: c3c5b55407 (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - 柚原きこさん» コメントありがとうございます〜! こんな作品でよろしければ是非どうぞ〜! (2018年1月4日 19時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
柚原きこ - この作品のリンクとどういうものなのかを簡単に書かせていただきたいのです。もしよかったらお返事いただけると嬉しいです。長文、すみませんでした。 (2018年1月4日 17時) (レス) id: 1cca1a4110 (このIDを非表示/違反報告)
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