彼女の守り ページ20
「だ、ダメですA殿っ！！行ってはなりません！！」
「…」
尚も抗おうとするアーサー。
彼は僕の手をしっかり握りながら、必死にそう言った。
何故そうまでして止めようとするのか、理解出来なかった。
何故そんな顔をするのか、わからなかった。
「あらあら、往生際の悪い坊やね。
………でも、アナタの我が儘に付き合う時間は無いの」
湧いた疑問は親友の姿をした彼女によって掻き消される。
その表情はにこやかに笑っていたが
彼女から漂う空気はﾋﾟﾘﾋﾟﾘとしていて、イラついているんだとすぐにわかった。
でもアーサーは僕の手を握ったまま、おもむろにリラの方を見遣る。
その顔は明らかにリラを睨みつけているようで、彼女の眉根がﾋﾟｸﾘと微かに動いた。
……このままじゃ、アーサーも危ない。
彼女は昔から怒ると怖かったけれど、今の状態だと一体どうなってしまうかわからない。
下手したら此処にいる皆が殺されてしまうかもしれない。
そんな事はさせない。
アーサーを……皆を、傷付けさせない。
守らなくちゃ。
皆を、アーサーを。
そして、リラを。
「………アーサー、前に言ったよね？
『A殿は道具では無く、立派な魔女です』って」
「へっ…？」
リラが酷い事をする前に僕は口を開くと、なるべく感情を込めないようにしてそう言ってやった。
案の定アーサーは拍子抜けな顔をして僕を見つめる。
…覚えて、ないのかな。
僕はわりと心に響いてたんだけど。
「『戻って来るのも来ないのも、A殿の自由じゃないですか』って。
…なら、僕が何処へ行こうと行くまいと、自由なんじゃないの？」
「……！」
アーサーの目が大きく見開かれる。
自分で言った事、思い出したんだろうか。
途端に彼は「そ、それはっ…！」と弁解する為か口を開き始め、かなり慌てた様子でそのまま話そうとする。
だけど、僕はその前に彼の手を振り払った。
「っ……？！」
「バイバイ、アーサー」
そうして僕は空いた手でリラの手を掴むと
彼には背中を向けたまま、なるべく淡々とした口調で告げた。
背中を向けているので、どんな顔をしているのかはわからない。
何を思ってるのかは、わからない。
ただ、確かにわかるのは
僕の声が少しだけ、何故か震えていた事。
「帰りましょう、A」
「……うん」
そうしてリラは優しく微笑むと
僕の手をしっかり握って、瞬間移動術を使った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
眼鏡っ娘☆ - あ！「返信ありがとうございます」って日本語がおかしいですね！正しくは「コメントへのお返事をくれてありがとうございます！」のつもりでした。意味が分からないコメントで本当にごめんなさい！長文ですみません！ (2017年7月30日 0時) (
レス) id: 0e24f7fe4c (このIDを非表示/違反報告)
眼鏡っ娘☆ - ついにゴウセルの登場だぁ！(σωσ)ゞ返信ありがとうございました！ (2017年7月10日 0時) (レス) id: 0e24f7fe4c (このIDを非表示/違反報告)
＊IJu＊(プロフ) - 眼鏡っ娘☆さん» コメントありがとうございます！！ はい！これからも更新頑張ります(｀･ω･´) (2017年7月4日 23時) (レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
眼鏡っ娘☆ - 更新頑張ってください！楽しみにしてます！！ (2017年7月1日 10時) (レス) id: 0e24f7fe4c (このIDを非表示/違反報告)
如月李瑠葉 - おお！ワクワクの展開！続き楽しみにしてますね(*^-^*) (2017年3月3日 23時) (レス) id: d847c59499 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
