辻 421 ページ4
彼等《イドラのサーカス》は普段はサーカス名を名乗っていて、本名は決して明かさない。
仲間の間でも人前ではお互いをサーカス名で呼び合っているので、思わずﾎﾟﾛﾘと名前を口にしない限り、彼等の名前を知る方法はないのだ。
…そんな、頑なに自分の名を語らない彼等が、仲間になったとは言えど敵対していた俺達にこうもあっさり本名を名乗るとは。
「で、そこにいる不機嫌そ〜な目付きの奴は瞬木隼人ってんだ。顔は怖いけど、根はそこまでじゃないからあんま構えなくっていいぞ」
……しかもハヤブサの名前も教えてくれるだなんて。
まさかの紹介に俺達は呆気に取られてしまい、勝手に紹介されたハヤブサ…否、瞬木は眉間に皺を寄せる。
しかしそこまでではないのか、すぐにいつもの顰めっ面に戻すと「さっさと入るぞ」と呟いて、さっさと館の入口に足を踏み込んだ。
「…お喋りグマが」
「俺が言わなきゃお前はいつ名乗ってたんだ？
仲良くなるにはまず名前を教えあわないとダメだろ？」
「じゃ、コイツらの名前も聞けよな。俺達だけだぞ、名乗ってんの」
「おっと、確かに」
玄関ですれ違いざまに2人はそんな会話を繰り広げ、グリズリー…いや、久坂はﾎﾟﾝと思い出したかのように手を叩いた。
そうしてくるりとこちらに向き直ると改めて「お前ら、名前は？」と笑顔で尋ねた。
……彼はあまり細かい事は気にしない主義なのだろうか…？
団員全員、こうだといいのだが。
「えっと……霧野、蘭丸…」
「……倉間典人」
「霧野に倉間か！これからよろしくな、2人共！
俺の事は気軽に呼び捨てにタメで構わねぇからよ」
「あ、ああ…よろしくな」
「……」
「くっだらねぇ…」
瞬木には冷ややかな目で見られてしまったが、それだけで彼は1人玄関の奥へと行ってしまった。
その背中を見て久坂は「俺達も行くか」と言うと、彼も瞬木の後に行き、俺達はまた顔を見合わせた後、お互いに肩を竦めた。
「……なんか、イメージと大分違うな」
「ま、まぁ……あんまり怖くなくっていいじゃないか」
「今のところは、な」
不安な一言を最後に添えて、倉間も館の奥へと足を踏み入れる。
俺もそんな倉間の1歩後ろをついて行き、完全に館内に入ると
開きっぱなしだった玄関の扉が、音もなくゆっくりと閉ざされた。
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＊IJu＊(プロフ) - ゆきうさぎさん» コメントありがとうございます！続編来てしまいした…()これからも亀更新ですが、頑張らせて貰いますー！！ (2018年8月11日 2時) (
レス) id: 3241b35fe8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきうさぎ - 続編おめでとうございます！！楽しみにしています！これからも頑張ってください！ (2018年8月10日 15時) (レス) id: dea74ddfb3 (このIDを非表示/違反報告)
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