サッカーと大罪人とお好きな松とヒーローと【短編集】2 (ページ37)

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「じゃあ逆に聞くけどさ、なんでそんなに気になんの？」

「その疑問の正しい回答を知りたいから。それ以上でも以下でもない。

そうじゃなきゃどうして人は疑問を抱くの？」

「っ…あーーっ、もう！」

一松はｶﾞｯと私の肩を掴むと、明らかに不機嫌そうな顔をして私を睨みつける。

でも、全く怖いとは思わなかった。

「人を殺すって事は、その人の人生を終わらせちまうって事なんだよ。その人の意思に関係無く。

それだけじゃない、その人の周りもきっと悲しむ。たまにテレビとかで見るだろ？芸能人が亡くなった時の葬儀の様子」

「……」

「…つまり、そういう事」

口早に説明し終わると一松は私の肩から手を離し、またﾎﾞﾘﾎﾞﾘと頭を掻いた。

そして立ち上がって私に背を向けると、ﾎﾟﾂﾘと呟く。

「…つかそういう事ゴミクズの俺に聞くなよな…」

「ゴミクズ？一松はゴミクズなの？」

「ええそうですよ、ゴミでクズですよ」

何処か諦めたような口調でそう言うと一松は「文句ある？」と振り返り、私を見遣る。

なので私は代わりに、こんな疑問を問い掛けた。

「…一松が死んだら、誰が悲しむのかな？」

「…」

すると一松は私から目をそらし、暫く黙り込んでしまった。

だがすぐにﾌｯと微笑むと、卑屈な笑みを浮かべて言った。

「さぁね…でも、逆にいなくなって皆清々するんじゃない？

だって俺、いらない存在だしね」

それだけ言うと一松は「猫にエサやって来る」と私を置いて部屋から出て行った。

「……………………………ふぅん」

残された私は暫く彼の言葉を頭の中で反芻させ、その意味を理解し、よく自分に言い聞かせる。

そして自分の疑問と今まで貰った回答を照らし合わせ、私はある結論に辿り着くと

部屋の片隅に立て掛けてあったバットを持って、私は彼の後を追い掛けた。