サッカーと大罪人とお好きな松とヒーローと【短編集】2 (ページ29)

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愛しき憎い人【メリオダス】＊リオ様リクエストページ29

「おはよう、団長。
今日も素敵な朝が来たわ」

薄暗い部屋の中で、1人の女性がそう言った。

その部屋には幼い少年の様な顔立ちの男性がもう1人、手首と足首を鎖で繋がれていた。

その瞳はどんな瞳も通さない程黒く濁っていて
彼は無表情でただただ虚ろに床を見つめていた。

「相変わらずドライなのね、団長は。
でも、そういう所も嫌いじゃないわ」

女性は微動だにしない彼にﾆｺﾘと微笑みを向け、そのよく跳ねた金髪を優しく撫でてやった。

〝団長〟と呼ばれたその男は、ソレを黙って撫で受ける。

「……ところで団長。

貴方はどうして人間と一緒にいたの？？」

暫く女性は男の頭を撫でていたか

ふと顔から表情が無くなり、ｸﾞｼｬｯと彼の髪の毛を掴んで首を傾げた。

「どうして団長は私ではなく、あの女を選んだの？
どうして団長は私を選ばなかったの？？

最初から私を選んでいれば、こんな事にはならなかったのに」

黒く濁った男の瞳をじっと覗き込みながら、彼女は問う。

その間にもｷﾞﾘｷﾞﾘと彼の髪を掴む手は休まらず、根元から引っ張っていく。

しかしそれでも、男は無反応だった。

「………………

…………王女様、今どうしてると思う？」

だが彼女が『王女様』と告げた瞬間、彼の表情が僅かに反応を示した。

その事に女性は腹立たしく思いながらも、言葉を続けた。

「王女様はね、今も元気に私の偽物(ダミー)と過ごしているわ。
それはもう、憎たらしい程元気に」

「…」

だんまりな男に構わず「でもね」と女性は続ける。

「…最近、王女様ね、私の偽物(ダミー)と話してくれないの。
もしかしてバレちゃったのかしら？どうしようか、団長？」

首を傾げてﾆﾀﾘと笑う彼女は、何かを企んでいるような残酷なものを思わせた。

男はやっと顔を上げて彼女と目を合わせると、何かを訴えるかのように口をぱくぱくと動かした。

しかし声らしき声を発する事はなく、女性はｸｽﾘと微笑んだ。

「冗談だよ、ジョーダン！

大丈夫よ、団長。貴方が此処にいる限り、貴方の大切な王女様やお仲間さん達には手を出したりしないんだから」

そして手を伸ばし愛おしそうに彼の頬を撫でると

彼女は懐からナイフを取り出し、微笑んだ。

「さぁ、そろそろ本題に入りましょう。

メリオダス、あなたはどうして私達を裏切ったの？」

先端を彼の顔に向け、微笑みを湛える彼女の顔には、禍々しい紋様が浮かんでいた。