グノーシア短編集＊LOOP3＊ (ページ6)

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「……Aと沙明は、そういう関係？」

「ううん、違うよ！ただ沙明に会いに来ただけ！」

「そう……なの？じゃあ、沙明あげる」

「あ、それはダイジョブでーす」

少しの間は沙明は最早置物としてそんな会話していたのだが、ふと食堂の扉が開き、セツが入って来た事に気付く。

やば、セツにこんな場面見つかったら何て言われるか。……沙明が。

こんなにくっついてニコニコしてる所見られたらどうなってしまうのか。……沙明が。

私は慌てて沙明から離れ、席を立つと「じゃあまたね〜！」と足早にその場を立ち去った。

「……沙明？大丈夫？」

「………………」

－－－

あれから私は沙明に1度も絡まれていなかった。

いつもならちょっとその辺歩いてるだけで鉢合わせるってのに。驚くほど会わなかったし、会ったとしても何故か向こうから避けるように進路方向を変更してった。

いやぁ、沙明に見つからない船内はこんなにも快適だとは思わなかった。調子乗って娯楽室行ったらLeViに危ないゲーム勧められちゃって撤退しちゃった。てへっ。

毎回こうだったらいいのになぁ……
でもこの平和なループにするのにまず沙明にこっちから迫らなきゃいけないのがネックだ。

いや、別にそこまで沙明のこと嫌いじゃないよ。
ただ、しつこく絡んで来るのが嫌なだけ。

今日みたいにフツーに放っといてくれれば全然異性として……いや、それは言い過ぎか。口を開けば下ネタばっかだし。でも友達とかならアリ……寄りのナシかな。

さぁて、そんな事より何処行こっかなぁ……
折角なんだし普段は出来ない事しちゃわないと。

女子の共同部屋行って女子会もありだし、食堂でおやつ食べるのもイイな。展望ラウンジでボーッとするのもジムでちょっと走るのもオトメの水槽に遊びに行くのも……うーむ、色々あって迷っちゃうなぁ！

「うグッ？！」

「おわっ！？」

そんな事を考えながら通路を歩いていたら、不意に誰かとぶつかってしまった。

私はそのまま尻餅をついてしまい、床にぶつけたお尻の痛みに唸っていると、眼前に手を差し伸べられる。優しい人だ。

「ありがとう」と思わず手を握ってから、私は気付く。
その黒光りするジャケットの袖は、あまりにも見覚えのあるデザインだと。

「だ……大丈夫か？」

恐る恐る腕を伝い、顔を上げる。

案の定、目の前に立っていたのは沙明で。
彼は困り眉で私を見下ろし、心配そうな顔をしていた。