グノーシア短編集＊LOOP3＊ (ページ23)

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……沙明は、グノーシアだ。

元々はこの船内に3人紛れていたグノーシアの1人。ただ、その内の2人はコールドスリープされた。

でもその2人がコールドスリープされる前に何人かはグノーシアの餌食になったり、投票でグノーシアではない人もコールドスリープしてしまったりで……
結局、残ったのは私と沙明、そしてレムナンだけで、沙明は船をまんまと占拠した。

レムナンは今言った通り、格納庫に閉じ込められている。ご丁寧に鎖で繋がれ、格納庫は愚か体を自由に動かす事も出来ないぐらいぐるぐる巻きにされている状態だ。

しかも口にするのは毎日水だけ……
そんなんだから元々細身だったレムナンは日に日にやつれ、目に見えて衰弱していた。

でも沙明は決してレムナンに食事は与えなかった。
それどころか私がレムナンに接触する事を禁じ、水を与える時もいつも私が部屋で寝た後、1人で行っていた。

だから……だから、こっそり沙明が寝ている間に、食べ物をあげただけなの。

私のせいで(・・・・・)こんな事になっているから……せめて、食べ物だけでも、って……思って…………

「わ……私、は……！」

「……頼むから。もう、俺の傍から離れないでくれ」

もう、我慢の限界だった。

今日こそは、と思って震える口を開いたが
次の瞬間、沙明は私を抱き寄せた。

まるで縋るように私の背中に腕を回し、閉じ込めるように抱き締める。その腕は微かに震えていて、私は言葉の続きを言えなかった。

「……わ、私……ここまでして、生きたく、ない……」

それでも精一杯、言葉を絞り出した。

彼の腕の中で安心してしまう自分が嫌で。
そんな狡い自分が本当に、嫌で。

離れようとしたけれど、沙明が許してくれなかった。

「わ、私……私、こうまでして、生きたく、ない……生き残りたく、なかった……」

「A……」

「ど、どうして……私、立ってるの……？
皆と……普通の人達と同じように、眠ってはいけないの……？」

声が、震える。

罪悪感で押し潰されてしまいそう。

脳裏に過ぎる、こうなる前の皆の事。
グノーシア騒動から逃げ延び、偶然この船に乗り合わせた人達。色んな人がいたけれど、でも皆優しかった。

見ず知らずの私を助けてくれて。一緒にご飯を食べてくれて。色々な事を教えてくれて。

こんな気持ちになるなら、何も知らずに消えれば良かった。