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「…………仕方ねーじゃん」
観念したオレはおもむろに懐から端末を取り出し、操作する。すぐにラキオの端末が鳴り、ラキオは訝しげな顔をして自分の端末を見遣る。
そうして海みたいな綺麗な眼を大きく見開いた。
「こっ、これはっ…?!」
「この間奪ったその石っころ……と、ついでで奪ったモン売っぱらって得た資金。昨日の夜に換金して来たんだよ」
そりゃ、かのラキオでも驚きはするだろう。
石1つ(+ちょっとした金品)で億単位のお値段するとは思わなかったんだろ。
その電子金を全部ラキオに送ってやったら、ラキオは暫く端末に釘付けになってた。心做しか肩が震えている気もする。そんな反応は珍しいからちょっと面白かった。
「っ…こんな大金を急に僕の端末に送って来るンじゃないよ!びっくりするじゃないか!!」
「イーじゃん。お前、前に零してたろ?なんちゃら銃買って軍資金がカツカツだ〜、とか何とか。
ホントならあの琥珀、オレのコレクションに加えようとしてたのに……感謝して欲しーぜ」
「だからってこんなっ…!いらないよ!人の物盗んで得たお金なんて!とりあえず今すぐコレは返すからね!君が責任を持って…」
「金はあって困るモンじゃねーんだし、有難く貰ってくれよ。あ、余ったらオレに返せよ」
「だから今すぐ全額きっちり返すと言っているだろう?こんな大金、急に貰っても……!」
「黙って受け取ってくれよ。それぐらいしか償い方、思い付かないから」
必死に端末弄りながらオレに全額返そうとする律儀なラキオにそれは告げる。そうしたらラキオははたと手を止めてオレを見た。
その時のオレは……どんな顔してたんだろーな。
ラキオが顔を顰めたから、イイ顔でない事は確かだ。
オレはそっとラキオから目をそらす。
これでも反省してるんだ。ホントに。
でも仕方ないだろ?
金が足りないって聞いた直後にあんな高価な石っころを見せびらかすように身に付けてたあのジジイが悪い。
オレ達、革命軍は徐々に勢力を伸ばしてるが、でも対政府にはまだまだ及ばない、って前にラキオが言ってた。
戦いに幾ら金が必要か知らないけど、カツカツだっつってたから少しでも足しにしようと思ったんだ。
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