△リボンが297こ▽ ページ6
警察は皆帆達の話を信じた。
つまり、自分を誘拐した犯人であるAは『通り魔殺人事件』とデパートでの殺人事件の犯人であると気付いてしまった。
合計で5人の命を奪い、1人の少年を誘拐した犯人に、果たして警察はどれ程の罰を与えるのだろうか。
まず無罪放免ではないだろう。
懲役なんて生ぬるい。
そうなると、終身刑か最悪、死刑。
どちらにしても、そうなってしまった場合、会えないだろう。死刑になんてなった日には本当にもう二度と、彼女の顔を見る事はない。
嫌だった。どうしても嫌だった。
彼女に会えなくなるのだけは嫌だった。
彼女は自分を唯一認めてくれる人。
それでいて、愛してくれる人。
例えその感情が歪んでいようと、間違っていようと構わない。
自分の望む感情が自分に向けられていなくてもいい。
自分の心を満たしてくれるなら、それでいい。
もうそれで十分だった。
なのに、そんな彼女を取り上げられたら。
そう考えたら息が止まりそうだった。
「(…………どうしよう…………)」
真名部は考えた。
どうしたら、彼女は捕まらずに済むのか。
どうしたら、彼女に再び会えるのか。
警察はきっと皆帆の情報からもう捜査は行っている。
情報次第だが、彼女が見つかるのは時間の問題だろう。
それまでに彼女があの家から逃げ出していればいいのだが……その可能性は低いだろう。
彼女はきっと自分がいなくなっても、あの家で帰って来ない母親の帰りを待っているのだから。
連絡でも出来ればいいのだが、彼女の家に連絡手段はない。
家の電話も線が切られていて、外部と連絡出来なくなってしまっているし、彼女がスマホなんて物を買い与えられているとは考えられない。
「(どうしよう……どうすれば……Aさんをどうしたら助けられる……？どうしたら………)」
頭を抱え、真名部は思考を巡らせる。
しかし良い案は思い浮かばず、真名部はｷﾞﾘﾘと歯を食いしばった。
だがふと、真名部は顔を上げた。
視線は先程自分が投げた、中身の無くなった枕。
その更に上へ。
そこは窓だ。青空の流れる民家が写った窓だった。
勿論、Aの家のようにガムテープなんて貼られていない。
鍵も内側から掛けられるので、真名部でも容易に開ける事が出来た。
「…………そうですよね。
それしか、ありませんよね」
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