リボンの檻 7 【真名部陣一郎】 (ページ46)

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△リボンが337こ▽ ページ46

「…？」

最初はどうしてか理解出来なかった。
寧ろこっちが震える側のはずなのに。

真名部は少しの間、拍子抜けた顔をして目を瞬かせるだけだったが、何かに気付いておもむろに顔を上げた。

一見すると、Aの表情は凄みを利かせているようだった。
こちらを見下げるようにしているので、その分の迫力もあるのだろう。

しかし、何かに気付いた真名部にはその表情が全く別の表情に見えた。

例えば、そう……まるで怖がっているような。
何かに恐怖して堪えて、強ばっているような。

そう考えれば、彼女が震えているのも納得出来た。

きっと彼女は怖かったんだと思う。
テレビを見ている時の真名部の表情が。

それこそ、自分の母親と重ねて見えてしまったのかもしれない。
母親の事を思い出してしまったのかもしれない。

「……も、もしかして……怖かった、ですか？」

「…っ……」

真名部は彼女を怖がらせないよう、恐る恐ると言った様子で彼女に尋ねた。

一瞬、彼女の身体が震えた後、少しの間固まって、ゆっくりと頷く。
やはり真名部は彼女を怖がらせてしまったようだった。

すぐに「ごめんなさい…！」と真名部が謝ると
おもむろに壁についていたAの両手が下りる。

その手を真名部は優しく握ってやると
Aは「うぅう……」と小さな呻き声を上げ、縮こまってしまった。

「す、すみません……怖がらせてしまって……
もう大丈夫ですよ。あんな顔、もうしませんから」

小さな子供に読み聞かせをしてやるように
真名部は柔らかい口調で彼女を宥めながら、握っている手を撫でてやる。

そうして俯いたその頭も撫でると
おもむろにAは真名部の首に顔を埋めた。

真名部の背中に腕を回し、弱々しくも抱き締める。

真名部な一瞬驚いたが、彼もそっと彼女の背に腕を回した。

「……怒られるのかと思った」

「そんな事しませんよ」

「殴られるのかと思った」

「そんな事もしません」

「嫌われたのかと思った……」

「…嫌いになるわけ、ないじゃないですか」

真名部の耳元で今にも消えそうな、泣きそうな声で呟くAの言葉をハッキリ否定すると、彼女は小さく頷く。

ゆっくり真名部から離れ、鼻を啜ると
彼女はニコッと笑顔を浮かべて「そーだよね」と言った。

その言葉に真名部は「はい」と答えると
Aは嬉しそうに笑い、今度は真名部を抱き寄せた。