△リボンが217こ▽ ページ24
真名部を取り戻しても尚、フライパンを突きつけるA。
真名部は何度も声を掛けるが、彼女には届かない。
ずっと瞬木を睨んでいるだけだった。
もう真名部にはどうしようもなかった。
どうすれば彼女は再び自分を見てくれるのか、わからなかった。
「……A…さん……」
彼女の肩に置いていた手を下ろし、真名部は落胆する。
この感じは何処か懐かしい。
まるで、Aに誘拐される以前の自分のように思えた。
父にも、母にも、自分の意見は聞いて貰えず。
友人にも、自分の言葉は届かない。
その上でAにまで見られなくなってしまったら。
いよいよ自分は独りになってしまう。
「……アナタまで、僕を無視しないで……」
ポツリ。誰にも聞こえないような、か細い呟き。
縋るような思いが口から溢れた。
するとAの様子が微かに変わった。
瞬木を睨んでいた瞳が見開かれ、視線はゆっくり真名部に移った。
真名部は俯いていて気付いていない。
俯いて肩を震わせる真名部に
Aは爐つての自分の姿瓩判鼎佑拭
「…………」
Aはそっと、掲げていたフライパンを下ろす。
真名部はソレに気付いて顔を上げると
目の前には困ったように笑うAが立っていた。
「A…さん?」
「かえろっか」
拍子抜けした顔をする真名部に、Aは続けた。
そうして持っていたフライパンを着ていた上着の背の中に突っ込み、フードで隠すと、にこりと無邪気に笑った。
真名部はいつもの彼女が戻って来たような気がして
心の底から安心した。
真名部も思わず頬を綻ばせると、Aはおもむろに真名部に手を差し出した。
真名部はその手を何の迷いもなく握ると
そのまま2人は路地裏から出ようと歩き出した。
「っ……おい、待てよっ!」
瞬木のすぐ横を通り過ぎようとした時、Aの腕に瞬木が掴みかかる。
頭が痛むのか片手で頭を抑えながらも
猛禽類を思わせる眼光でAを睨む。
「テメェ……このまま行かせると思ってんのかっ…?!」
「……ごめんなさい」
「はァ……?!」
「頭、殴っちゃってごめんなさい」
痛みに呻く瞬木に、Aは悲しそうな目をしてそう謝った。
先程とはまるで人が違う態度に
瞬木は拍子抜けして目を見張る。
だがすぐ我に返って「何をっ…!」と食い下がると
Aは途端に不機嫌そうな顔をして続けた。
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*IJu*(プロフ) - あずさん» はじめまして!コメントありがとうございます!一気見するぐらい夢中になって頂けて嬉しいです(´˘`*)お褒めの言葉もありがとうございます、恐縮です…!これからも更新頑張りますー! (2021年2月8日 1時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
あず - はじめまして…!今日このシリーズを見つけて、一気見してしまいました…!!!真名部が少しずつ追い詰められていく様子が細かく描写されていて凄く読み応えがありました…!!本当にすごいです!!これからも応援しております…!! (2021年2月7日 17時) (レス) id: 9c7942e2bb (このIDを非表示/違反報告)
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