検索窓
今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:8,130 hit

△リボンが231こ▽ ページ38

真名部は暗闇の中、1人走っていた。

上も下も右も左も真っ暗な暗闇。
進んでいるかもわからない状況で、それでも走っていた。


理由はわからない。
わからないけど、ただ怖かった。

何かが後ろから迫って来ているようで。
誰かから見られているようで。
何かに捕まってしまいそうで。


後ろを振り返る勇気も無く、真名部はただただ暗闇を走る。

何を目指すワケもなく、誰を探すワケもなく。


此処は……何処だろう?
どうして自分はこんな所に?

走りながら真名部は考える。
もう体力が限界で、息が上がっていた。


どうして誰もいないんだろう。
どうして何も無いんだろう。

怖かった。ただの暗闇がどうしようもなく。
怖かった。彼女が自分の傍にいないのが。



『……!』



ふと、前方に人影を見つけた。

見覚えのある背中。
オレンジ色の頭に自分と同じ背丈……


……皆帆だ。今、目の前に皆帆がいる。


皆帆はこちらに気付いていないのか、背中を向けたまま自分と同じ方向を歩いている。

心細く思っていた真名部は彼を見つけて喜び
声を上げてこちらに気付いてもらおうとした。



『皆帆くん!皆帆くん、後ろです!』



……だが、どうだろう。
皆帆は真名部の方を振り返らなかった。

聞こえなかったのかと思い、もう一度声を上げて呼んでみたが、やはり皆帆は振り返らない。


しかも、自分は走っていて、皆帆は歩いているはずなのに。一向に距離が縮まらないのだ。

寧ろ、どんどん遠ざかって行く。



『皆帆くん…!?待って!置いて行かないで!!
僕はここです!ここにいますってばっ!!』



少しずつ小さくなる背中に真名部は何度も声を掛ける。

両手もブンブン振って何とか気付いてもらおうと思ったが、やはり気付かれなかった。


ここまで存在を主張しているのに、気付かれないとなるとまるで……まるで、自分が幽霊にでもなったかのような気分だ。

折角見つけた自分以外の存在。
せめて追い付きたい一心で真名部は走るが、距離も縮まる様子はない。


真名部はまた怖くなった。
涙さえ滲んで来て、視界が歪む。

真名部はそれでも皆帆を視界から外さないように。
また独りぼっちにならないように。
必死に涙を拭い、必死に追い掛けた。

△リボンが232こ▽→←△リボンが230こ▽



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (35 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
20人がお気に入り
設定タグ:イナギャラ , 真名部
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

*IJu*(プロフ) - あずさん» はじめまして!コメントありがとうございます!一気見するぐらい夢中になって頂けて嬉しいです(´˘`*)お褒めの言葉もありがとうございます、恐縮です…!これからも更新頑張りますー! (2021年2月8日 1時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
あず - はじめまして…!今日このシリーズを見つけて、一気見してしまいました…!!!真名部が少しずつ追い詰められていく様子が細かく描写されていて凄く読み応えがありました…!!本当にすごいです!!これからも応援しております…!! (2021年2月7日 17時) (レス) id: 9c7942e2bb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:*IJu* | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年12月29日 3時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。