△リボンが376こ▽ ページ36
「…………………言ったじゃないですか」
震える声で真名部は口を開いた。
空いている方の手で彼女の淡い緑色の頭を撫でてやると、Aは何処か安心したような顔をする。
きっといつもの元気な彼女だったなら、猫のように擦り寄って甘えて来ていただろう。
そう思うと愛しさが込み上げて、真名部は思わず頬を綻ばせた。
「僕はもう、Aさんから逃げない、って。
こんなに大好きなのに……今更逃げろなんて、出来るわけないじゃないですか」
「…………………そっかぁ…………………」
だんだんと、彼女の瞼が降りていく。
ゆっくり降りて、握る手の力も無くなっていく。
真名部はそんな彼女にそっと顔を寄せて
熱を失っていく彼女の頬に、触れるだけの口付けを落とした。
すると完全に目を閉じてしまったAが微笑んだ気がした。
実際、そのまま眠ってしまった彼女の表情は幸せそうで
人間8人を殺したとは思えないほど愛らしく、満ちていた。
「……おやすみ……ま、な……べ……」
「……おやすみなさい、Aさん」
「…………………………………………」
____そうしてそのまま、彼女は動かなくなった。
絡めた指に力を込めても、もう彼女は握ってくれない。
頭を撫でても擦り寄って甘えて来ないし、笑う事も喜ぶ事もない。
真名部は深く、深く息を吐くと、頬を伝う涙を袖で拭う。
実感は無かった。それもそうだろう。
だって数時間前までは、いつも通り元気だったのに。
目の前で眠る彼女も表情が穏やかで、次の日にはケロッと起きていそうにも思える。
でもそれが叶わない事は、この場の誰よりも理解していた。
「だから……出来るわけないんですよ」
ふっ、と。真名部は口元に笑みを浮かべた。
自嘲するような、でも何処か吹っ切れたような。
悲しそうで、でも同時に爽やかに思える笑み。
そのまま顔を上げ、真名部は眠ったAを見下ろす。
「今更、アナタから
その手には血塗れのテーブルナイフ。
切っ先を自身の首に向けると
なんの躊躇もなく、彼はナイフを突き刺した。
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*IJu*(プロフ) - キジバトさん» 初めまして!コメントありがとうございます^^楽しんで頂けているようで良かったですー!作者無計画なんでこの章で終わるかはわかりませんが、でも終わりが近付いているのは確かなので、是非最後まで楽しんで頂けたら…!更新頑張ります! (2021年12月24日 0時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
キジバト - 初めまして!この作品めちゃめちゃ大好きです!文章もすっごい神だし、真名部の心の動きとかがすごく丁寧に書かれててすごく面白いです!クライマックスなのはちょっと寂しいですが,そのまま最後まで頑張ってください…!応援してます! (2021年12月23日 1時) (レス) @page1 id: 7552df8542 (このIDを非表示/違反報告)
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