【イナイレ】シッカーラプンツェル5【不動明王】 (ページ2)

今日:15 hit、昨日:1 hit、合計:40,096 hit

◇ラプンツェルは退かないページ2

私は慌ててボールを取ろうと思ったけれど、1歩遅くサクマが片足でそのボールを踏み付けた。

このままじゃ、サクマは禁断技を打ってしまうっ……！

私は咄嗟にサクマの前に立ち塞がると
歪んだ顔で笑っていたサクマは、ﾋﾟｸﾘと眉間を反応させた。

「………退いてくれ、A」

今までに聞いた事のない、低く重たい声。

途端にｿﾞﾜﾘと背筋に寒気が走る。
まるで醜い魔女でも見るような瞳……

濁った瞳には私の姿は映っておらず
ただ、ここまでライモンや私に守られて苛立ちを募らせた表情で私を睨むように見下ろした。

「………退かない………」

「お前がそこに立ってちゃ、シュートが出来ないだろう？お前は良い子なんだ。だから………

……………退け」

「退かない！」

「退けエェ！！！」

「退かないっ！！」

遂には声を荒らげるサクマ。

怖かった。怖くて怖くて堪らなかった。
でも私は両手を広げたまま、サクマの前から退かないでいた。

だって私がいたら、シュート出来ないんでしょう？

私が前にいたら、シュート出来ないんでしょう？

ソレは私を怪我させない為の良心からか
それとも、別の理由なのか。

定かではないけれど、でも私がこうやって邪魔すればいいんだ。

そうすればサクマは禁断技を使わない。

このまま隙を突いてボールを奪っちゃえば、あとは私が………

「＿＿＿俺の邪魔をするなァァアアア！！！」

「……………あ、」

遂にブチ切れたのだろうか。

サクマは今日1番の怒鳴り声を上げると
おもむろに大きく後ろに足を振り上げた。

私が前に居るのにも関わらず(・・・・・・・・・・・・・)。

気付いた時にはもうボールはサクマによって放たれていて、避ける事も出来ずにサクマが蹴ったボールはそのまま私のお腹にめり込んだ。

まず、一瞬息が出来なくなって。
その直後に襲う、とてつもないお腹の痛み。

しかもお腹を強くボールで圧迫されたせいで、胃の中の物が迫り上がる感覚。

全てが体感した事のない感覚だった。

一瞬で起こった出来事だけれど
私にはまるでスローモーションのように見えて、苦しみも痛みもやけに長く感じていた。