御本人登場です。 ページ16
「…私のスマホのパスワード、ですか？」
ああ、もうホント。皆帆君って人は。
なんて事言い出すんでしょうか。
これには流石にAも眉を顰めますよね。
当たり前です。暗証番号なんて普通、人に教えたりするものではありませんし。
そもそも、こちらは詮索する気満々ですし。
……いや、僕は違いますけれど！
でも皆帆君は気付いていないんでしょうか。
「うん、パスワード」とAのスマホを指差しながら、悪びれもない様子で彼女に更に尋ねた。
「今さっき、A宛にメッセージが届いてね。
ちょっと送り主が気になっちゃって。
でも真名部君によると、Aはスマホの暗証番号を変えたらしいじゃないか。だからそのメッセージの送り主がわからなくて困ってるんだ。
だから、パスワード教えて？」
「はぁ……」
「お前、ソレで教えて貰えると本気で思ってんの？」
包み隠さず、ありのままを全て話し過ぎる皆帆君。
こればっかりは狩屋君の言葉に同意です。
Aだって困った顔をしてしまっています。
だがふと、Aは視線をこちらに向けると心做しか睨むような目で僕を見遣ったような気がした。
「……一応聞きますが陣君、私の前のスマホのパスワードを教えてはいませんよね？」
「もっ、勿論です！個人情報ですしね！」
「そうですか。なら、いいんです。
数字が好きな人は簡単に思い付いちゃいそうなので」
彼女の言葉に僕は必死に首を横に振ると、Aの目付きが幾分か柔らかくなった気がした。
部屋に入り、僕に手を差し出すので僕は彼女に持っていたスマホを返しますと、Aは画面を起動させて僕達に見えないようにパスワードを入力。
メッセージを内容を確認しているんでしょう。
確認している間は無表情だったので、誰からので、どんなメッセージなのかはわかりませんでした。
皆帆君なら或いは察したのかもしれませんが。
「……それで？なんて書いてあったの？」
「誰々？誰から？誰からのなの？」
「……誰からのでもいいじゃないですか。
内容も大した事ではありませんし」
一通り確認したのでしょうか。
彼女は再びスマホの電源ボタンを押してスマホを閉じると、顔を上げてそう言った。
いつもは正直に何でも答えてくれるのに、こういう時に限って濁すような答え方。
そう言われてしまうと気になってしまうのですが。
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