リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ8)

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△リボンが103こ▽ ページ8

「…因みに、そこの子は…？」

「え、ええっと……」

「じんくんも私とおんなじだよ！
今は学校に行ってないの！」

「………今は？」

「そう！私のお家で一緒にお留守番してるんだ！」

言い淀む真名部の肩の上にAは手を乗っけながら、真名部の代わりに答えた。

しかしその言い方が引っ掛かったのだろう。
途端に警備員の訝しげな視線が真名部に向かう。

真名部はその視線に耐えかね、思わず帽子の鍔で顔を隠し、やや目を伏せてしまうと、警備員の視線が更に鋭いモノになったような気がした。

「(どうしよう、どうしよう、どうしよう…！？
このままじゃバレる……バレてしまう。その前に何とかこの場を切り抜けなければ…！)」

真名部は内心穏やかではいられなかった。

暑くもないのにﾀﾞﾗﾀﾞﾗと汗が流れ、鍔を持つ手が震える。

疑われている。自分は今、まさに疑われているのだろう。
一体何を疑われているのかはわからないが、真名部にはどうしても件の誘拐事件の事としか思えなかった。

きっとこの人は今、自分がその誘拐された被害者ではないのかと疑いにかかっている。

勿論、ソレは大正解なのだが、真名部はどうしても見つかりたくなかった。

被害者なのに、まるで加害者かのような焦りっぷり。
この時の真名部は誘拐された側だと言うのに、何故だか目の前の警備員に自分の正体を悟られるのを恐れた。

「……じんくん、と言ったかい？」

「は、はい……」

「すまないが……1度、その帽子を取ってみてくれるかな？」

「っ……？！」

だが真名部の願いも虚しく、1番恐れていた事を警備員は口にした。

自分の髪型と顔を少しでも隠す為の帽子。
ソレを取れと言われたのだ。

そんな事したらバレるに決まっている。

テレビで顔はバッチリ映ってしまったし、何より最近では毎日のように流れる事件だ。

そうでなくても、平日のこんな時間に学生と思しき2人の男女がこんな所にいるのが悪いのだろうか。

どちらにしろ真名部にとっては最大のピンチだった。

かと言って断ったら、それはそれで怪しまれそうで。

真名部はどうする事も出来ず、ただ帽子の鍔を握り締めたまま顔を上げられないでいた。