リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ43)

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△リボンが138こ▽ ページ43

「…あの、これを見て下さい」

真名部なりに考え、出た結論をそのまま行動に移す。

背中に隠したスマホを彼女に見せると
Aは一瞬固まった気がした。

その反応に真名部は『やっぱり』と思った。

やはり彼女はこのスマホの存在を知っていた。
となると破壊したのもきっと彼女だろう。

直後にAは顔を上げ、ぎこちなく笑う。

「…見つけたの？」

「はい…見つけました。
シンクの中に放り込まれていましたよ」

「…」

「…アナタの仕業、ですよね？」

恐る恐る、真名部は尋ねる。
Aの表情が分かりやすく歪んだ。

彼女の仕業と見て間違いないらしい。
確信した真名部は怒りでも悲しみでも恐怖でもなく
ただｸｽﾘと笑うだけだった。

Aは真名部のその反応に、反射的に顔を上げた。
また怖がられると思っていたんだろう。

しかし続けられた言葉はあまりにも優しく
それでいて、どこか狂っていた。

「別に隠さなくてもいいのに」

「………えっ………？」

「こんな風にしなくても、僕はもう何処にも行きませんのに。アナタって意外と心配性なんですね」

壊れた自分のスマホを片手にｸｽｸｽと笑う真名部。
まるで他人事のように話す彼に、Aは困惑の表情を浮かべる。

そんな彼女を安心させるような優しい笑みを真名部は浮かべると、驚く事に彼は空になったばっかりのゴミ箱の中に壊れたスマホを投げ入れた。

「ほら、これでもう誰とも連絡出来ませんよ。
僕は何処にも行きません」

「…でも、真名部…」

「それにもう必要ありませんでしたからね。
丁度良かったです」

「そ……そう…なの？」

「はい、そうですよ」

Aを不安にさせないようにそう言い聞かせる真名部。それは真名部の本心でもあった。

だがAは困惑の表情を浮かべたまま、微かに首を傾げる。
そっと真名部から視線を外し、何やら考えるような顔をすると「…そっか」と呟いて、Aは再び真名部と目を合わせた。

「…えっと、その…勝手に壊して、ごめんね？」

「ええ、構いませんよ。
そんな事より(・・・・・・)掃除を進めちゃいましょう。
今日中にここら辺は片付けておきたいので」

「う、うん、わかった」

Aは真名部に謝ると、真名部は笑ったまま彼女を許した。
彼にとって大した問題ではないからだ。

そのまま真名部は再び皿を洗い始め
Aは掃除に再び電源を入れるが
掃除機を掛けている間はずっと、何か考え込むような顔をしていた。