リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ38)

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△リボンが133こ▽ ページ38

「おお～！」

ようやく片付いた部屋は真名部が思っていたよりも広く感じた。

初めて見たリビングの床は廊下と同じフローリング。
Aも物珍しげに感嘆の声を上げて部屋中を歩き回る。

とはいえ、まだ掃除は終わっていない。
大きなゴミを出しただけで、まだ埃っぽい部屋は汚いままだ。

窓に貼り付けられたガムテープだってどうにもしていないし、シンクの方は手を付けていない。

まだまだ時間がかかりそうだ…と真名部は脳内で計算して溜息を吐くが、広くなった部屋にはしゃいでいるAを見て、真名部は今日中には終わらなさそうだと考える。

上の階に放置されていた掃除機を持ち、真名部は髪ゴムで後ろ髪を1つに束ねて腕捲りをすると
Aもマネして上着の腕を捲り上げる。

とは言え、上げたのはあくまで上着の袖であり
その下の黒い袖は捲っていないので、全く意味は無い。

ただ、楽しそうに笑っているAを見て
真名部はその事についてツッコむのはやめにしておいた。

「では、僕はこの部屋に掃除機を掛けますので。
アナタはキッチンの方の片付けをお願いします」

「はーい！」

真名部の指示にAは素直に返事を返し
そのまま踵を返してシンクの方へ向かった。

コンセントにプラグを差し込み、電源を入れて掃除機を動かす。大きな音と共に細かいゴミが吸い込まれ、埃が更に部屋中に舞う。

真名部は咳き込みながら『マスクが欲しい』なんて考えるが、そんな物が無いのは聞く前から分かりきっていた。

しかも砂でも吸い込んでいるのか、常に〝ｼﾞｬﾘｼﾞｬﾘ〟と音が聞こえて真名部は掃除機の方が壊れないか心配になってしまう。

皿の破片などはちゃんと処理したはずだったが、やはり細かいのが残っていたのだろうか。
これも1回掛けただけでは終わらないかもしれない。

「(本当にこの家はどうなっているんですか…)」

「………あっ、」

溜息を吐き、咳き込みつつも真名部は掃除機を掛けていたその時、不意にAの声がしたと思ったら
直後に〝ｺﾞｯ〟と鈍い音がした。

思わず真名部はAの方を見遣ると
Aは呆然と下を見下ろし、ﾊﾟﾁﾊﾟﾁと瞬きを繰り返す。

おそらく、片付けている最中に皿を落として割ってしまったんだろう。

しかし、それにしては音が低いような気がした。