リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ32)

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△リボンが127こ▽ ページ32

「………本当に、子供みたいですね」

あの後、暫く泣き続けたAは疲れたのかそのまま眠ってしまった。

寝る前にソファに移動させたのは良いが、彼女はソファの上に寝ようとはせず、そのすぐ下の床に横になってしまった。

仕方なく真名部は毛布を彼女に掛けてやり、行儀が悪いが胡座をかいて膝の上に彼女の頭を乗せた。

くぅくぅ、と寝息を立てて眠る彼女は本当に子供のように安らかで、真名部は思わず口元に笑みを浮かべる。

そっと頭を撫でてやると、Aは擽ったように首を窄め、何処か嬉しそうに笑った。

「(……というか、よくよく考えたらさっきの言葉……)」

ﾄﾝﾄﾝ、とリズムよく彼女の肩を叩きながら、真名部はふと思い起こす。

自分は先程、彼女に『好き』とハッキリ言った事が
今になって思春期の真名部を辱め、真名部は彼女を起こさないよう静かに悶えた。

「(勢いで言ってしまいましたが……あ、あんなの……ま、まるで……告白みたいじゃ……)」

1人で考えて、1人で頭を抱えて。
耳まで真っ赤になった真名部は堪らずソファの上に頭を乗せた。

とはいえ、彼女自身はきっとソレをそういう風には捉えなかっただろう。

彼女の言う『好き』は恋愛的なソレではなく
本当に単純な〝好き嫌い〟の『好き』なのだから。

そう考えたら良かったような、少しガッカリしたような。複雑な気持ちになって真名部は溜息を吐くと、再び視線をAに戻した。

気持ち良さそうに自分の膝の上で眠るA。
前日、あんまり眠っていないのもあるんだろう。

真名部はその寝顔を見ていると救われる気持ちになったような気がして、また彼女の淡い緑色の髪に触れた。

「……大丈夫ですよ。もう僕はアナタから離れませんから。

アナタが望むまで、僕はアナタの傍にいますから」

優しく言い聞かせるように真名部は呟き、彼女の頭を撫でる。
するとAは聞いているのか、それとも余程いい夢を見ているのか。

その口元が笑ったような気がした。