リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ31)

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△リボンが126こ▽ ページ31

「ずっと、ずっと、隠し事して…真名部を騙してても……真名部は私の事、好き？」

鼻を啜り、まだﾎﾞﾛﾎﾞﾛと涙を流しながら、Aは問い掛ける。

その濁った瞳は、真名部には縋っているようにも見えた。

真名部は1度口を噤むと、黙って彼女に歩み寄る。
そうして彼女の目の前に立った時、真名部はそっと彼女に手を差し出した。

その瞬間、一瞬Aの身体がﾋﾞｸﾘと震えた。
ｷﾞｭｯと目を瞑り、首を縮めて身を固める。

まるでこれから来る痛みに耐えようと(・・・・・・・・・・・・・・)するように。

きっと彼女は否定的な言葉を投げ掛けられると思っているんだろうか。

真名部はそんな彼女を見て目を細めると、差し出した手を伸ばして、彼女の濡れた頬に優しく触れた。

「………？」

「……好きですよ」

触れた瞬間、Aは丸く目を見張る。

そうして真名部の言葉にその目を大きく見開いた。

「………ほんと………？」

「本当ですよ」

「ウソ、じゃ……ないの？」

「はい、嘘ではありません」

「………でも、私……人、殺しちゃって………」

珍しく戸惑うAに真名部はﾌｯと笑みを浮かべる。

彼女が怖がらないよう、ゆっくりと彼女の背中に腕を回した。

「殺したとか、騙したとか、もう……いいんです。

だって僕も、アナタの事が好きですから」

驚くAの背中を、真名部は優しく撫でてやった。
そうして彼女の耳元で、真名部はハッキリと告げる。

すると、見る見る内に彼女の表情がまた歪んで行き
Aは真名部の首の後ろでまたﾎﾞﾛﾎﾞﾛと涙を流して子供のように泣き始めた。

「怖かったんですね、今まで」

「…うんっ……」

「ずっと寂しかったんですよね」

「うん…！」

「大丈夫です。安心して下さい。
僕はもう、アナタから逃げようとはしませんから」

「うんっ…！！」

膝から崩れるAに真名部も同じように崩れ
床に膝立ちになって真名部は彼女を受け止める。

Aは真名部の胸の中で、今まで泣けなかった分も泣いた。
その頭を撫でると、Aはしがみつくように真名部の服の裾を握る手に力を込める。

彼女は確かに人を殺した。
だからこそ頭が可笑しいだとか、常人ではないと思い込んでいた。

だが蓋を開けてみれば、彼女はただの女の子。
人一倍寂しがり屋の、普通の少女だった。

身長は彼女の方が真名部より大きいのに
この時ばかりは、自分よりも随分と小さく思えた。