リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ27)

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△リボンが122こ▽ ページ27

その後、Aは1度もリビングに降りる事はなく、また真名部も2階に上がる事無く次の日を迎えた。

流石に買い物から返ってから何も口にしていなかった真名部もお腹が減り、床に置いたまま放置していたビニール袋を漁ってバターロールとぬるくなったペットボトルのお茶を取り出す。

一応、Aが降りて来た時の為に彼女の分も用意してやったが、降りて来る気配はなかった。

そのまま1人リビングで朝食を食べるはめになり
真名部は味のしないバターロールをお茶で流し込む。

「(1人での食事って…こんなに寂しかったんですね)」

久々に1人で静かに食事を摂る真名部はふとそんな事を考える。

誘拐される前は両親を避けていたので
1人で食べる事は寧ろ当たり前だった。

だがAに誘拐されてからはずっと彼女と共に食事をしていたので、改めて1人の寂しさに真名部は思わず溜息を吐く。

だからかお腹は減っているはずなのに食欲は湧かず
小さなパン1つ食べただけで彼の朝食は終わった。

食べ終わると真名部は再び部屋の扉を見遣る。

やはり彼女は降りて来なかった。
きっとまだ上の階にいるんだろう。

真名部は様子を見に行こうと1度ソファから腰を上げたが、すぐにまた座り直す。

昨日、彼女は｢1人にして｣と言っていた。
なのに自分が様子を見に行って、またぐずられるのも困ると思ったのだ。

それに、もしかしたら昨日は知らず知らずの内に真名部が何か嫌な事を言ってしまったんじゃないかという思いもあった。

彼女にとって聞きたくない事、言われたくなかった事を口にしてしまったから、あんな風になってしまったんではないかという思いも少なからず真名部の中に存在して、真名部は行きづらかった。

「(…自然に降りて来るのを待ちましょう。
きっとお腹が空けば降りて来るでしょうし」

それでも行くか行かないか迷い、結局行かない事を選択した真名部。

用意したパンと飲み物はそのままにして
真名部はシャワーを浴びようとソファから立ち上がる。

その時、不意に〝ﾄﾝﾄﾝ〟と足音が響いた。

まずは上から。次第に下がっていく足音。
階段を降りている音だ。

「…！」

静か過ぎるリビングではその足音は十分に聞こえ
真名部は思わず浴室に行こうとしていた足を止め、扉の方を見遣る。

ヤケにゆっくりとした足音は部屋の前でﾋﾟﾀﾘと止まると、少しの間を置いて、そっと開かれた。